端のない場所

これ以上やったら吐きそうだ、の先まで、初めて行った。
目に映るもの全てが、自分の持ち物になった。自分の持ち物でしかないものを、世界そのものと同一視していたらしかった。
自由なことはなんとなく判ったけれど、もう厭だなと思った。

素面

一日が二度と繰り返されないものだとしたら、
この先、事態は更に苦しく、取り返しのつかない思いを時折溢れさせながら、続いていく事でしょう。
そして、更に、質問は解答を乗り越えて、永久に問い続けるでしょう。
私は、なにも矛盾していません。

桜

さくら、さくら、
おまえは、どこを見ているか。
いっぱい、人がいるだろう。
いっぱい、光があたるだろう。
寂しいな。
今日はほんとに、寂しいな。

流線形

書いても、書いても、バラバラになる。
わたしが流れていて、ひとときも止まっていないからだ。字を作って、後向いて、掃除していく。だから、なにも残らない。
今日は、５時間もやってみた。

外

夜の雨が、窓ガラスびしゃびしゃ叩いている。
なんにも格好よくない音、間抜けな私だけが、この音を聞いている。生きるに、いいも悪いも、ないのかも知れない。消さないで、やっていけばいいだけ、見ていけばいいだけ、他にはなんにもないのだろうか。
自分が眠るために、字を書き、無関係に、びしゃびしゃと降る外界、私個人は、この時間を、死ぬまで繰り返すのだ、と思う。

カエル

娘は、私の心を読む。今日の私は、紫色だという。娘によると、紫は悪い色であるらしい。元気な心は、桃色であるらしい。カエルのような笑顔でじっと見つめてくる。まるい瞳の中に、何の疑いもない。
もう二度と、芯から明るい世界は、訪れないように思い、その根拠のない不安で、空を見るのも怖いのだが、未来からやってきたかのような、自分の娘は、まるで私の解答のように、瞳に瞳を、映しているのだ。