起きると、まだ頭の整理が出来ていず、昨夜聞いた言葉を反芻する。
よく人から相談を受ける。私は人に相談しようと思った事があまりない。全くない気がする。それは、自分が受け身の体質で、悩みが酷くなると、悩みに飲み込まれて思考停止に陥るからだと思う。悩みが主で、私は従、だから誰かに相談して、主人である悩みに打ち勝つ、というプロセスが、私の中で発想されないのだ。
聞いていると悩みも色々ある。愚痴もある。軽、中、重、場合によっては聞いただけで共犯、秘密の共有者とされて、一緒に悩みの沼へと沈み込む可能性もある。それから、殺されると思う程、延々と窮乏を訴える人もある。本来の悩みとは違う所に怒っている人もある。相談しながら、あなたには悩みが無さそうでいいわね、という人もある。一体、どういう意味なんだろう。
色々な人の話を聞いたけれど、相手の悩みを聞いていると、結局のところ、現状を変える事への最後の抵抗、であるように思われる。
よく人から相談を受ける。私は人に相談しようと思った事があまりない。全くない気がする。それは、自分が受け身の体質で、悩みが酷くなると、悩みに飲み込まれて思考停止に陥るからだと思う。悩みが主で、私は従、だから誰かに相談して、主人である悩みに打ち勝つ、というプロセスが、私の中で発想されないのだ。
聞いていると悩みも色々ある。愚痴もある。軽、中、重、場合によっては聞いただけで共犯、秘密の共有者とされて、一緒に悩みの沼へと沈み込む可能性もある。それから、殺されると思う程、延々と窮乏を訴える人もある。本来の悩みとは違う所に怒っている人もある。相談しながら、あなたには悩みが無さそうでいいわね、という人もある。一体、どういう意味なんだろう。
色々な人の話を聞いたけれど、相手の悩みを聞いていると、結局のところ、現状を変える事への最後の抵抗、であるように思われる。
胃が痛いのか、心臓が痛いのか、体の中心部が痛みだしてから一ヶ月くらいになるだろうか。袋に金貨を隠しているみたいに、たえずお腹をさすっている。痛いうちは頭がしゃんとして、考えようによっては時間を有意義に使えるのだから、いいのかも知れない。
精一杯、あちこちの義理を果たそうと思うが、いい人だったけど死んじゃったね、と死後に言われそうな位、最近は角がなくなってしまった。いい人になれた所で、何の益があるだろう。悪い奴の便利ということで、本当にそれ以外意味はないと思う。弱い人といい人は混同されやすい。弱さを人に誇る事もまた、同じように意味のないことだ。
美しい世界と反転してすぐ真隣に、この持ちきれない世界があるようで、道ばたのアスファルトを突き割って生える草にも、靴の裏で踏んでいくのが、怖ろしい気がする。
精一杯、あちこちの義理を果たそうと思うが、いい人だったけど死んじゃったね、と死後に言われそうな位、最近は角がなくなってしまった。いい人になれた所で、何の益があるだろう。悪い奴の便利ということで、本当にそれ以外意味はないと思う。弱い人といい人は混同されやすい。弱さを人に誇る事もまた、同じように意味のないことだ。
美しい世界と反転してすぐ真隣に、この持ちきれない世界があるようで、道ばたのアスファルトを突き割って生える草にも、靴の裏で踏んでいくのが、怖ろしい気がする。
今日から娘は新学期。朝、大量のビール缶を片付けていると、送り出した娘から電話、職員室の電話を借りた気配で、習字セットを忘れたからとどけてください、とのか細い声。また忘れ物かと喉まで出かかるが、両手いっぱいに荷物をぶら下げて歩いていった今朝の姿が思い出され、あれじゃ一つ抜けていても気付かないか、と溜め息をつく。自転車に乗って小学校へ向かう。真冬の凍った空気が耳元でびゅうびゅう鳴った。
自分も子供の頃は忘れ物常習犯で、笛だの宿題だの教科書だの、なんでも忘れて学校に行ったが、親が届けに来てくれた事は一度もない。困らせるのが本人の為になるのだろうか。要求を蹴って冷たくすれば良かったか。しかし自分が昔さんざん忘れて、子供よ、おまえはするな、というのは酷い矛盾ではないだろうか。……
校庭に自転車をとめて、閉まった教室のドアを少しだけ開けると、真面目に座っている子供達と喋っている担任の先生の姿が見えた。それから、娘。子犬のようにうるうるした目で、「おかあさん、ごめんなさい」。
自分も子供の頃は忘れ物常習犯で、笛だの宿題だの教科書だの、なんでも忘れて学校に行ったが、親が届けに来てくれた事は一度もない。困らせるのが本人の為になるのだろうか。要求を蹴って冷たくすれば良かったか。しかし自分が昔さんざん忘れて、子供よ、おまえはするな、というのは酷い矛盾ではないだろうか。……
校庭に自転車をとめて、閉まった教室のドアを少しだけ開けると、真面目に座っている子供達と喋っている担任の先生の姿が見えた。それから、娘。子犬のようにうるうるした目で、「おかあさん、ごめんなさい」。