今日から娘は新学期。朝、大量のビール缶を片付けていると、送り出した娘から電話、職員室の電話を借りた気配で、習字セットを忘れたからとどけてください、とのか細い声。また忘れ物かと喉まで出かかるが、両手いっぱいに荷物をぶら下げて歩いていった今朝の姿が思い出され、あれじゃ一つ抜けていても気付かないか、と溜め息をつく。自転車に乗って小学校へ向かう。真冬の凍った空気が耳元でびゅうびゅう鳴った。
自分も子供の頃は忘れ物常習犯で、笛だの宿題だの教科書だの、なんでも忘れて学校に行ったが、親が届けに来てくれた事は一度もない。困らせるのが本人の為になるのだろうか。要求を蹴って冷たくすれば良かったか。しかし自分が昔さんざん忘れて、子供よ、おまえはするな、というのは酷い矛盾ではないだろうか。……
校庭に自転車をとめて、閉まった教室のドアを少しだけ開けると、真面目に座っている子供達と喋っている担任の先生の姿が見えた。それから、娘。子犬のようにうるうるした目で、「おかあさん、ごめんなさい」。
自分も子供の頃は忘れ物常習犯で、笛だの宿題だの教科書だの、なんでも忘れて学校に行ったが、親が届けに来てくれた事は一度もない。困らせるのが本人の為になるのだろうか。要求を蹴って冷たくすれば良かったか。しかし自分が昔さんざん忘れて、子供よ、おまえはするな、というのは酷い矛盾ではないだろうか。……
校庭に自転車をとめて、閉まった教室のドアを少しだけ開けると、真面目に座っている子供達と喋っている担任の先生の姿が見えた。それから、娘。子犬のようにうるうるした目で、「おかあさん、ごめんなさい」。
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