悪天候、始まる。朝から雷が鳴り響いていた。ざんざんざんざん、屋根に雨が斜めに降ってくる。地面に出来た水たまりは、赤い金魚が泳いでもおかしくない程、池にそっくりだった。
自分の童話が収束するのを待った。障子の戸をぴたりと閉めて、これ以上見ないようにした。心の内側に向く矢印を外側に向けて、娘のコップに日本茶をいれた。自分の茶碗にも茶をいれた。湯がはねた。障子の向うでは金魚が、何千となく群れをなして泳いでいた。魚影はどうしようもなかった。水という水に内側の矢印がついていた。手元の茶碗にも、魚の白い腹が浮かんだ。
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