はげしく落ち込んで、朝になった。娘も相棒も元気でいる。なにも悪しきことなし。落ち着いて、一日過ごすべし。
ストレッチに行く。舗道ばかり見て歩いていると、向かいからやってくる飼い主と犬の足跡が金色に輝いているような錯覚を覚える。あの人達は幸福なんだ。いつもの坂道を上がって、遠くにある窓の洗濯物が均等に干してある。住宅街を抜けて静かな緑のミニ林を過ぎると、B先生の家のドアが見えてきた。ドアがほんの少しだけ開いていた。
心もまた、自分の知らないところで故障や修復を繰り返しているのだろう。落ち込みが治らなくても、なるべく気にしないように過ごした。見るべき物もあらぬ己の心よりは。
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