一日、何もしないで座っていた。夜になって初めて外出すると、街灯が木々を照らしている。馴染みのスーパーは閉まりかけていた。買ったことのない肉屋にそーっと入ると、中にいたおじさんが、はっとしたように、いらっしゃいと言った。挽肉はありますか、と聞いたら、ちょっと待っててね、今挽いてあげますから、と言って、大きな冷蔵庫からピンク色の肉を取り出した。いつも看板の前を素通りするおじさんの店の商品が、新鮮なのか心配だった。遅い時間に迷惑な客だと思われていやしないかと、どんどん心配になってきた。おじさんは手で肉をすかすか切って、グラインダーでミンチ肉を作ってくれた。そして量りに乗せたら、注文ぴったりの500グラムだった。ぴったりでしたね、とおじさんは笑った。
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