朝、電車を乗り継いで、S川駅のホテルに行く。着くと巨大な建物だった。うやうやしく頭を下げるボーイさんに会釈を返して、中を通り過ぎただけなのをごまかした。
北海道の叔母さんといとこのMちゃんが、介護の専門学校を受験する為、二人で東京に来ていた。叔母さんは大きい荷物をぶら下げて立っていた。Mは今、丁度面接の最中だわ、と私に言う。腕時計の針は10時だった。喫茶店で話をしながら、Mちゃんが戻ってくるのを待った。合格したらMちゃんは東京で暮らすつもりだそうだ。叔母さんは応援と寂しさが混ざったままらしく、仕方ないっしょ、と力なく笑った。自分にも娘がいるけれど、まだ子供だから、旅立ちの日はまるで想像出来ない。
一時間後に現れたMちゃんは、会うなり目に涙を浮かべて、もうダメだ、と訴えた。面接官と会話が噛み合わなかったらしい。三人で適当に歩き出し、目の前にあったトンカツ屋に入って、とにかく終わったのだからとカツなどを頼むが、Mちゃんはほとんど箸もつけない。うなだれた頭を見ながら、自分が18歳で上京した時の気持を思い出す。心臓の音が直に聞こえるような、しんとしたホテルの天井だった。彼女の賭けもうまく行きますように。
受かったら、ご馳走するからね、と別れ際にMちゃんに言うと、Mちゃんはほんの少しだけ笑って、小さな八重歯を見せた。
北海道の叔母さんといとこのMちゃんが、介護の専門学校を受験する為、二人で東京に来ていた。叔母さんは大きい荷物をぶら下げて立っていた。Mは今、丁度面接の最中だわ、と私に言う。腕時計の針は10時だった。喫茶店で話をしながら、Mちゃんが戻ってくるのを待った。合格したらMちゃんは東京で暮らすつもりだそうだ。叔母さんは応援と寂しさが混ざったままらしく、仕方ないっしょ、と力なく笑った。自分にも娘がいるけれど、まだ子供だから、旅立ちの日はまるで想像出来ない。
一時間後に現れたMちゃんは、会うなり目に涙を浮かべて、もうダメだ、と訴えた。面接官と会話が噛み合わなかったらしい。三人で適当に歩き出し、目の前にあったトンカツ屋に入って、とにかく終わったのだからとカツなどを頼むが、Mちゃんはほとんど箸もつけない。うなだれた頭を見ながら、自分が18歳で上京した時の気持を思い出す。心臓の音が直に聞こえるような、しんとしたホテルの天井だった。彼女の賭けもうまく行きますように。
受かったら、ご馳走するからね、と別れ際にMちゃんに言うと、Mちゃんはほんの少しだけ笑って、小さな八重歯を見せた。
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