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人間になればよかった...
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今日は家事の研究。レディースあざらしの日。
野菜を切る時は真直ぐ。茶碗を洗う時にも洗剤を無駄にせず。そういうことに時間を費やしていると、朝から昼、昼から夜と時間が流れていく。奥歯を噛みしめる暇がない。
目の前の手元を一生懸命見つめていると、いつの間にか心がよそ見している。自分の持ち時間は増えたり減ったり見失ったりする性質のものではなくて、心配しなくても全部使えるのだ、と思えてくる。一瞬一瞬、時を大切に暮らそうと頭では考える。実際にやってみると不可能だとすぐ判る。それは私が単純に、時の長さに耐えられないからだ。時は私にとって長すぎる。自分に耐えられる分の時だけを世界から拝借して、私は暮らしているに違いない。そんなことを、シチューを作りながら考えた。
今夜出来上がった料理は上手くいって、鍋は空になった。家族も喜んでくれた。部屋も綺麗に片付いた。良く出来たレディースディーだとほっとする。穏やかな気分でパソコンを立ち上げる。初めてネットオークションというものを見て、面白そうだと思い手を出してみた。ただの中古の黒い鞄なのだが、誘惑に負けて入札してしまったのだ。衝動買いまでレディースディー。気がざわざわする。明日の夜〆切だって。もしうっかり買えてしまったら、どうしたらいいだろう。
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105
家族三人でA塚駅まで小旅行する。電車で10分。僅かな距離でも初めて行く街は、とても新鮮な気持になる。
目当てという程のこともないが、駅前に激安洋服ショップがあるというので、喜んで行ってみる。おぬまさんは何度か来ているらしい。撮影の時に衣装部さんが低予算で服を買う場所だそうだ。59円のシャツだの、30円の靴下だの、目が点になるような価格の服が山積みに売られている。前々から噂は聞いていたのだが、確かに安い。安い事は安いが、一回洗濯機にかけたらバラバラになりそうなものもある。国籍不明のデザインや、手にした瞬間後悔するような凄いフリル付きなど。毒、といったらいいのだろうか。ほんの少しの毒入りの服だ。毒入りの食品、洋服、雑貨、本、住宅、エトセトラ。自分が根からの田舎育ちなんだと自覚するのは、こういう商品群を見た時だ。
背景など気にせず楽しめばいいのだ。ああ、綺麗な色だな、と手にとったら、後ろに物凄い悪魔の目玉のイラストがついていた。
一時間ほどそこにいて、結局105円のキャミソールを2枚と、198円の子供スカートを買った。500円でお釣りがくるのが怖いような。家に着いてからスカートをはかせてみると、大変気持の良い服だった。どうしてこの値段がついていたのだろうか。娘は喜んでくるくる回った。
東京の自宅で、のろのろと陸ガメのように起き出す。長く留守をしていたので、埃や水垢など、気になる汚れを徹底的に掃除したい。掃除は好きな性分なのに、今日は身体が石のように堅くて、全然動きたくない。水垢を見つめて、雑巾を握りしめたまま、5分くらい経過。陸ガメは海に帰ってきた。じゃなくて寝室に帰ってきた。娘はママ寝ないで、と肩をゆさゆさ揺さぶる。寝ない、寝ない、と言いなからお昼に眠る。
お葬式を見たのは自分にとって有意義な機会だった。私は惜しまれずに死ぬ。誰の記憶にもあまり残らないだろう。私は一生懸命やったが、人間としてはあまりに勘が悪すぎた。私はどのように生きたいのだろう。正しい事を主張して死ぬ?感じた事を記録して死ぬ?それは死に方でしかない。生き方とは何だろう。
冷蔵庫をあけると空だ。お米も味噌も醤油もない。夜ご飯の時間が来ても買い物には行かずに、雷の鳴り響く外を眺める。雨が降ってきた。雨は降りたいように降ってくる。寝る勇気、やめる勇気、力を抜く、後ずさり、バック転。
長い長い待ち時間のあと、ストレッチャーに乗せられて、出来たてのお骨がやってきた。葬儀屋の係員は必要以上にきびきびと指示する。何百体ものお骨を処理してきた自負だろう。手際の良さが板についている。骨の部位を示し、この骨はどこそこ、と細かく説明する。係員は自身がいつか死ぬ日の事をあまり信じていないようだ。私もそうだ。せめて見ておこうとお骨を見つめる。お骨は何も語ってはこない。私はじっと見つめるふりをしていた。睨むような目付きだけだった。
周囲を見回すと、若い人も、老いた人も、子供も、皆それぞれお骨を前にして神妙な顔をしている。本当にこれが人の終着点だろうか、と心の底から疑問に思う。葬式が全ての終わりなんて、到底信じる事は出来ない。
綺麗な斎場から出て、蒸し暑い風の吹く中で青空を見上げると(斎場では何故か必ず雲を見てしまうのだった)色はあまりついていなくて、草原にはとんぼが飛んでいた。近未来のような灰色の建物から、喪服の人々がぞろぞろと出てくるのが見えた。
夕方、どこでもドアで東京に戻る。
役員の仕事で学校に行き、沢山のかき氷を作る。PTAと青少年委員会共催でキャンプファイヤーが行われ、縁日のような活動を数カ所でやった。雪のような氷の山を、発泡スチロールの容器によそう。簡単な仕事だけれど、全校生徒分と保護者の分も入れて一体何個作ったのだろうか。今は目をつむっても、かき氷の色ばかりだ。
私は地域活動やPTAといった集団が苦手な質だ。昇級や給料のない上下関係は、みんな足並み揃える事でしか秩序を築けない。私は偏屈だから、揃えなさいよと暗に強要されると、何故だか判らないし、判りたくないし、なんだか厭だ。だけど、役員活動をやってみて考えは変わってきている。自分は強制的にお付き合いする機会でもなければ、新しいお母さんと友達になったりすることはない。だから外の風を入れてもらうには大変いい機会だ。それに世間には強引な人、気の弱い人、色々な人がいる。自分も色々な人のひとつの色として存在すればいいのだと段々判ってきた。
雪のように真白い氷にシロップをかけていく。青はブルーハワイ、緑はメロン、黄はレモン、赤はいちご。不意に自分の娘がやってきて、青を嬉しそうに受け取っていった。
暗がりでキャンプファイヤーを眺めていると、茨城のおぬまお母さんから電話をもらう。高齢の伯母さんの一人が病気で亡くなり、通夜をするとのこと。カラフルな色は途端に冷めて、頭がクロになる。急きょ喪服を用意して、明日の昼茨城へUターンすることに。
頭痛で一晩中うなされた。朝目覚めたら痛みは半減していて、昼からは通常の体調に戻っている。無理して書いても益がないらしい。あんなに死ぬほど痛い最中に無理して書いたところで、結果はこれか。混乱あざらしよ。体調不良の時は素直に穴をあけた方が良いのだろうか……。
小沼お母さんと別れて、どこでもドアで東京に戻る。我が家は驚く程せまく、こじんまりして物がなにもない。お客さん目線になって室内をチェックする貴重な機会だ。暮らしている時には気になって仕方ない細かな点も、他人から見るとそんなもんかな、である。この家には飾りが少ないなと思う。この三本指ブログの背景が何もないのと一緒である。もう少し愛想があっても良さそうなものだ。
久しぶりに生のおぬまさんと対面する。おぬまさんは何か影のあるクールな人になっていた。1時間ほどいると、お客さん感覚は消えてしまった。おぬまさんは少し肥っていた。
日記でもつけようと思い立ち上がると、娘が、ママ行かないで、もっと親子で会話をしようよ、と言う。茨城では殿様のように威張っていた娘も、東京に来ると甘えてすり寄ってくる。好きなお話していいよ、なんでも聞いてあげるから。娘がそう言うので、私は「この何もない部屋に、カーペットをひこうと思うのだが……」と話しかけた。娘は「そんな話か……」と言って、別の部屋に行ってしまった。
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