いつも利用している安売りのスーパーでは同じ女性達がレジを打っている。店長の奥さんがレジを打ちながら前のお客さんと気さくに喋っている。奥さんはお釣りを数えながら言う、「……まったくねえ、どこもそんな話ばっかりよ。あきらめてるうちに人生終わっちゃうのよ。」そうして二人はガハハと笑う。自分の後ろには、さっき120円の豆腐か80円の豆腐かで迷っているらしい、売り場で存在が気になったお婆さんが、軽そうなカゴを持って並んだ。奥さんは仕事に戻んないと、といった感じでこちらのカゴを引き寄せる。自分は話を盗み聞きしたことを悟られないように、財布の中を数えるふりをした。奥さんは営業スマイルで愛想よくレジを打ってくれる。お婆さんが後ろからカゴを見ている。三人の視線が交錯するカゴの中身だ。生きている限り続く金の勘定の音だ。「はーい、いつもありがとね。5円ある?」スーパーに行くと、空想している内はこの人達に軽蔑されるという気がいつもする。
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