調合

粘りの多い字なのか、石のように硬い字なのか。もっと砂のようにサラサラさせたいのか。夢から字にどうやって変換させたら良いか。
意味の含有率は、どれも同じ筈なのだけど。
配列次第で、どうにでも変わる。

Ｈ先生

娘が明るい顔で帰ってきた。月曜から休んでいた担任のＨ先生が、４日ぶりに教室へ顔を出したそうだ。５時間目の途中で、授業はされなかったようだけど、先生の顔を見た子供たちは皆「おかえりー」と迎えたとか。それを聞いて意外な気もしたけれど、何かほっとした。そのあと先生と少し遊んだんだよ、明日もきっと来るんじゃない、と娘はあっさりと言ったが、嬉しそうだった。この先生で学年の最後まで進んで、いいクラスになって欲しいと思う。

お茶碗

外郎売を、台所で、茶碗を洗いながら練習していると、もう結構暗唱できていて、舌も楽に動くようになったのを感じる。６月から初めて、やっとつっかえなくなった。
勉強するために生まれてきたのか、暇潰しに勉強するのか判らないけれど、終わりは確実にやってくる。たった１００年の痕跡のために、心を痛めるよりは、精一杯生きて、ぱっ、と消えてしまう道の方がいい。

黄信号

娘の新しい担任の先生が、貧血でお休みされて今日で２日目だ。詳しい理由も明かされないまま、娘達は副校長先生に授業を教わっているという。あまりいい兆候とは言えないけれど、もし駄目なら駄目で、早い段階で信号を出してもらった方がいい。前途のある人だから、こんなスタートで教職に失望されたりしては申し訳ない。また、本当に体調が悪いだけなのかも知れない。降参宣言が出ないうちは、先生を信じて黙ってついていくしかない。

水たまり

１００のバイト。自転車通勤の人は真冬に雨が降った時はどうしているんだろう。今日は酷い雨だったけれど、１０月で早くも歯の根がガチガチ鳴った。厳寒期には手足が凍りつきそうだ。水を通さない手袋と長靴を用意しなければ。
店に行くと、傘立てが無くなっていた。盗難に遭ったとのこと。あんな物を盗んでいくなんて意味が判らない。２４時間開いているのに、人目を避けるように引きずっていったのだろうか。お客さんが皆困って、入口に傘を立てかけていくので、下に水たまりが出来た。
今日は常連さんが多かった。爪を真黒に塗っている女性のお客さんが来た。やすりをかけて悪魔のように鋭く尖らせている。大きな声で独り言を言いながら２度レジにやってきた。あの人は病院に通っていない気がする。通院したら楽になるのにと思うけれど、声をかける事は出来ない。

指で遊ぶ

意志のない只の字を、書けたらきっと楽しい。跡は残ってしまうけれど、生きていて何かの痕跡が残るのは、仕方ないことだ。それも近いうちにみんな消えて、この場所だけが残るのだった。子供の時からここで遊んでいた。紙くずだったり、誰かの本の上だったりした。国語を離れて、自分というものはなかった。
白紙と、国語と、字を見ることが秘密と同意義だった。今思うと、不思議な気さえする。