区から通知をもらった胃がん検査を受けに行く。半日の絶食のあとに地図を持って会場へ向かうと、寒空の下を空腹で歩くのが、せつなく感じた。最近はお金がないけれど、飢えの心配がないだけでありがたいと、迷子になりながら考えた。昭和っぽい古い建物の前に奇妙なバスが停まっていて、胃を写真撮影する検査をその中で受けた。
紙で出来た服に着替えて、お約束のバリウム150㏄と発泡剤を飲んだ。これがまずいと噂のバリウムかと変に納得した。看護婦さんが、はじめての方ですね、若いから大丈夫よ、と優しく言った。顔をあげると、年配の女性が鉄製のベッドに寝かされて、機械ごとぐるぐる回転していた。ひどく苦しげだった。年配の人はきついだろうと思った。自分の番が来て、ベッドが縦横無尽に動き出した。X線で透明になった胃の中をむらなく回っている白い液体が想像された。久しぶりに心が消えて、体がある、という実感がした。指示される通りに3回転したり、息を止めたりしている内に、だんだん気が遠くなるのを感じた。
帰り道、バリウムで膨れた胃をさすりながら歩いていると、道路工事をやっていて、水道管の修理中らしかった。錆びた管が縦横に張り巡らされていて、男性がさかんに赤土を運び出していた。
紙で出来た服に着替えて、お約束のバリウム150㏄と発泡剤を飲んだ。これがまずいと噂のバリウムかと変に納得した。看護婦さんが、はじめての方ですね、若いから大丈夫よ、と優しく言った。顔をあげると、年配の女性が鉄製のベッドに寝かされて、機械ごとぐるぐる回転していた。ひどく苦しげだった。年配の人はきついだろうと思った。自分の番が来て、ベッドが縦横無尽に動き出した。X線で透明になった胃の中をむらなく回っている白い液体が想像された。久しぶりに心が消えて、体がある、という実感がした。指示される通りに3回転したり、息を止めたりしている内に、だんだん気が遠くなるのを感じた。
帰り道、バリウムで膨れた胃をさすりながら歩いていると、道路工事をやっていて、水道管の修理中らしかった。錆びた管が縦横に張り巡らされていて、男性がさかんに赤土を運び出していた。
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