北海道の直輸入の毛ガニを、半額以下でお安く提供しているんですが、と電話先の男性は感じのよい声で言った。人のよさそうな、少しなまりのある声だ。電話の後ろでは電波の雑音か、活気のある市場の音にも似たざわめきがやたらと鳴っている。北海道の訛りとは少し違うようだ、と思いながら、電話をかける方も、かけられる方も、お互いが滅入るのにな、と受ける度に気が暗くなる。
人のよい声、という演技が、板についた、関西の人のようにも感じる。
申し訳ありませんが、今はとてもそういう余裕がありませんので、となるべく丁寧に言う。あっ、そう、と声がどす黒く急変して、電話はプッと切れた。
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