さっぱりとした朝だった。昨夜の雨が空気を洗い流して、はるか遠くまで空の色が見渡せる。午前中は一人きりでおぬま邸にいた。
鏡で背中を映してみると、痛むところに痣が出来ている。試しにバレエの姿勢をとるとズキッとするが、転落して滑った距離を思うと、怪我は軽く済んだ方らしい。来週には良くなってくれるだろう。
お昼過ぎ、いつもと同じ時刻にI駅。東京行の特急電車に乗り込む。電車のドアが閉まると、娘とおぬまお母さんは、ドア越しに手と手を重ね合わせて、また来週ね、と合図を送る。娘はいつも夢中で窓をバンバン叩く。以前に一度あまりに叩きすぎて、電車のドアが開いてしまった事があったっけ。そういう儀式をもう4年位やっている。
誰も喋らない静かな車内で、娘の寝顔を見ながら、持ってきた本を読んだ。テレビドラマ用脚本『私が殺した男』。十年以上も前に担任講師だったI先生の作品。先生の経歴の中では際立った作品ではないけれど、体質が滲み出ていて興味深い。先生のようにどんなに制約だらけの状況でも感動の核を見つけだせるようにならないと、この先も自分はものにならないだろう。掲載されていた若い頃の写真を眺めていたら、昔から怖い目だなと思う。いつの間にか上野駅に着いた旨の車内放送を聞いた。
鏡で背中を映してみると、痛むところに痣が出来ている。試しにバレエの姿勢をとるとズキッとするが、転落して滑った距離を思うと、怪我は軽く済んだ方らしい。来週には良くなってくれるだろう。
お昼過ぎ、いつもと同じ時刻にI駅。東京行の特急電車に乗り込む。電車のドアが閉まると、娘とおぬまお母さんは、ドア越しに手と手を重ね合わせて、また来週ね、と合図を送る。娘はいつも夢中で窓をバンバン叩く。以前に一度あまりに叩きすぎて、電車のドアが開いてしまった事があったっけ。そういう儀式をもう4年位やっている。
誰も喋らない静かな車内で、娘の寝顔を見ながら、持ってきた本を読んだ。テレビドラマ用脚本『私が殺した男』。十年以上も前に担任講師だったI先生の作品。先生の経歴の中では際立った作品ではないけれど、体質が滲み出ていて興味深い。先生のようにどんなに制約だらけの状況でも感動の核を見つけだせるようにならないと、この先も自分はものにならないだろう。掲載されていた若い頃の写真を眺めていたら、昔から怖い目だなと思う。いつの間にか上野駅に着いた旨の車内放送を聞いた。
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