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人間になればよかった...
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早朝、おぬまさんは三時間だけ寝て、また起きる時間になった。目覚まし時計で起きられない事は見た目ではっきりしているので、相棒の私が起こす事にしている。撮影に入る前からおぬまさんは全然寝ていない日が続いていた。身体を揺らしてあげると体温がすごく低い。声をかけると、「死ぬ……」と、不吉な言葉を漏らした。
自分と娘はおぬまさんの命を食べているのだった。おぬまさんはまだ生きていて、むくりと岩のように起きた。まだ明けない朝の中、また現場に出て行った。
今日も小学校は代休。起きてきた娘にご飯を食べさせてから、留守番を頼んで、近所のB先生のストレッチ教室に行く。自然体のレッスンで身体の隅々を伸ばして、解毒作用のように感情の掃除をする。死にそうになっている相棒の傍らで、鏡に向かって踊りを踊っている自分が、急に輪郭をくっきりとさせてきた。私は仕事をしなければならない。無能な自分でもなんとかしなければいけないのだ。
昼から午後は家でずっと掃除をして過ごす。学生が連絡をきちんとしてくれるようになった。第一声から今までとは違う、明るい響きが含まれていた。違う人と話しているみたいだ。もう彼らは自発的に動き出している。電話を切ったあと身体の力が抜けた。ほっとして嬉しくなり、娘のほっぺたをつねったりして遊んだ。
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