いつも利用している安売りのスーパーでは同じ女性達がレジを打っている。店長の奥さんがレジを打ちながら前のお客さんと気さくに喋っている。奥さんはお釣りを数えながら言う、「……まったくねえ、どこもそんな話ばっかりよ。あきらめてるうちに人生終わっちゃうのよ。」そうして二人はガハハと笑う。自分の後ろには、さっき120円の豆腐か80円の豆腐かで迷っているらしい、売り場で存在が気になったお婆さんが、軽そうなカゴを持って並んだ。奥さんは仕事に戻んないと、といった感じでこちらのカゴを引き寄せる。自分は話を盗み聞きしたことを悟られないように、財布の中を数えるふりをした。奥さんは営業スマイルで愛想よくレジを打ってくれる。お婆さんが後ろからカゴを見ている。三人の視線が交錯するカゴの中身だ。生きている限り続く金の勘定の音だ。「はーい、いつもありがとね。5円ある?」スーパーに行くと、空想している内はこの人達に軽蔑されるという気がいつもする。
義母とお茶を飲んでいたら、地震。東北の方は相当酷かったようで、亡くなった方の情報を聞いて気の毒になる。防ぎようのないことは本当に恐ろしい。
今日は地下足袋を履いた義母の後ろについて、駐車場の掃除をしたり、二週間ぶりの畑仕事をして過ごす。野菜も雑草も区別なく同時に育っていた。赤い苺やぐみの実は丁度食べごろで、娘が夢中で摘み取っては口に入れている。自分が先月植えるのを手伝った野菜も、夏には食べきれないほど収穫できそうだ。
夕方、お墓の周辺に除草剤をまきに行く。背の高い草が密生していて、ちくちくする葉をよけながら墓に辿り着く。義父の墓だ。亡くなるまでの半年間、毎日一緒に過ごした義父の口調はよく覚えている。闘病以外の思い出は少ないが、優しい言葉ばかりかけてもらった。私がもし誓いを守れない時は、どうか遠慮なく命をとって下さい。どうか私にお力をお貸し下さい。最近は迷いが多いので、全力で線香をあげたあと、希釈した除草剤をじゃぶじゃぶ撒いた。広い場所なのに静かだった。草の奥では義母と娘とが井戸のポンプで水を汲んで手を洗っている。草の間から見たら、二人が緑の中に浮かんでいるようだった。
今日は地下足袋を履いた義母の後ろについて、駐車場の掃除をしたり、二週間ぶりの畑仕事をして過ごす。野菜も雑草も区別なく同時に育っていた。赤い苺やぐみの実は丁度食べごろで、娘が夢中で摘み取っては口に入れている。自分が先月植えるのを手伝った野菜も、夏には食べきれないほど収穫できそうだ。
夕方、お墓の周辺に除草剤をまきに行く。背の高い草が密生していて、ちくちくする葉をよけながら墓に辿り着く。義父の墓だ。亡くなるまでの半年間、毎日一緒に過ごした義父の口調はよく覚えている。闘病以外の思い出は少ないが、優しい言葉ばかりかけてもらった。私がもし誓いを守れない時は、どうか遠慮なく命をとって下さい。どうか私にお力をお貸し下さい。最近は迷いが多いので、全力で線香をあげたあと、希釈した除草剤をじゃぶじゃぶ撒いた。広い場所なのに静かだった。草の奥では義母と娘とが井戸のポンプで水を汲んで手を洗っている。草の間から見たら、二人が緑の中に浮かんでいるようだった。