秋の入り口。暑いと涼しいの中間くらいの気温。気分的には夏の水着を箪笥に片付けたい気分だが、大きいバッグに三人分の水着とタオルを無理矢理詰めこんで出かける。電車を乗り継いで1時間後、S遊園地に到着。うわーい、お目当ての流れるプールだ。あまり嬉しくないが。
この天気で泳ぎに来るなんてさぞかし少数派だろうと思っていたら、意外にも中はかなりの盛況で、座る場所がない程カップルや家族連れで賑わっていた。様々な事情で時期外れと知りつつやってきた人達ばかりなのだろう。ぶるぶる震えながらプールで泳ぐ。おぬまさんはすいーとカッパのように泳いでいる。娘は犬かきをマスターしようと懸命だ。私は浮き輪に乗って歯の根をがちがち震わせながら、二人の背中を追いかけていった。
S遊園地は、閉鎖された施設が多い。膨大な数の椅子が死体のように幾重にも積まれたまま放置されている。時代遅れとなってしまった大型のアトラクションは、柱に錆がついてボロボロだった。異世界の建物を抜けて大観覧車に行く。チケットショップで格安で買った入場券の隅に、一枚だけ乗り物券がついていたからだ。
大きな円は音もなく昇っていく。無謀な夏のひと泳ぎだった。夏休みは今日で終わりだ。あまりに長い夏だった。去年していた娘との約束をなんとか無事済ませた訳だ。おぬまさんもほっとしている。海そっくりのプールが見えた。夕暮れで客は一人もいなくなっている。私達家族が泳いでいた時、ここから見ていた人もいたのだろうか。小さな、存在しないような無数の点のひとつとして。
この天気で泳ぎに来るなんてさぞかし少数派だろうと思っていたら、意外にも中はかなりの盛況で、座る場所がない程カップルや家族連れで賑わっていた。様々な事情で時期外れと知りつつやってきた人達ばかりなのだろう。ぶるぶる震えながらプールで泳ぐ。おぬまさんはすいーとカッパのように泳いでいる。娘は犬かきをマスターしようと懸命だ。私は浮き輪に乗って歯の根をがちがち震わせながら、二人の背中を追いかけていった。
S遊園地は、閉鎖された施設が多い。膨大な数の椅子が死体のように幾重にも積まれたまま放置されている。時代遅れとなってしまった大型のアトラクションは、柱に錆がついてボロボロだった。異世界の建物を抜けて大観覧車に行く。チケットショップで格安で買った入場券の隅に、一枚だけ乗り物券がついていたからだ。
大きな円は音もなく昇っていく。無謀な夏のひと泳ぎだった。夏休みは今日で終わりだ。あまりに長い夏だった。去年していた娘との約束をなんとか無事済ませた訳だ。おぬまさんもほっとしている。海そっくりのプールが見えた。夕暮れで客は一人もいなくなっている。私達家族が泳いでいた時、ここから見ていた人もいたのだろうか。小さな、存在しないような無数の点のひとつとして。
PR