古い切り株にキクラゲが生えていた。茸には詳しくないが、きっと間違いないと確信する。手にとって透かしてみると、象の耳のようで、微笑をさそう。捨てがたいものがある。ゆでて食べてみようかと思いながら、これで茸に当たって死んだりしたら、と、握ったりもんだりして家に戻る。
女が3人、義母と娘とわたし、わたしが調理担当だから、キクラゲを料理に混ぜ込むことは可能だ。もし本物なら生だからおいしいわ、と義母が言う。わたしはそれを台所のよく見える棚の上に置き、決断を引き伸ばすことにした。
象の耳の親戚は、結局、朝から夜までそこにいて、私達3人が暮す有り様を無言でご覧になったあと、夜、元の自然の土の上に戻された。
PR