書き物の〆切が近くなってきたので、相棒に娘を預かって貰って、今日は家に閉じこもっていた。体温が低下し、食欲が異常に増して、立ち上がったり座ったり、資料を読み返したりして、とにかく考え続ける。判らない箇所は途方もなく広がって、いつも収集がつかなくなるのだけど、一旦は原稿をぐちゃぐぢゃにするのが自分のやり方だ。全体をつらぬく核が見つかれば、そこが脱出口。見つからなければ、物語の迷宮から出られない。成功すれば、〆切直前に急速に冷え固まるようにして話が出来るし、失敗すれば、依頼者に渡すことの出来ない、無意味な言葉の断片で出来た巨大な球になる。自分が納得いくまで話を作るという贅沢は、もうしてはいけないと誓う。依頼者がある以上、ごめんなさい、球が出来ました、では済まされない。
夜遅くに相棒と娘が帰ってきた。ただいま!と抱きついてきた娘の髪が外気で非常に冷たかった。おかえりと返事しようとしたら、自分は失語症気味になっていて、ああ、うう、みたいな感じで声が出た。原人になっているのだった。
夜遅くに相棒と娘が帰ってきた。ただいま!と抱きついてきた娘の髪が外気で非常に冷たかった。おかえりと返事しようとしたら、自分は失語症気味になっていて、ああ、うう、みたいな感じで声が出た。原人になっているのだった。
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