茨城に来ている。パソコンのある部屋が寒いので、毛布をひきずっている。誰も話す人がいない分、つらつらと考えて時間を過ごす。
今までいろんな人と会ってきた。判らない人とも。弱虫や、優し過ぎ。許せる嘘、我慢できない自慢話、それらはいつも物凄く輝いていた。誰にも主役の日というのがあるのではないだろうか。他人の前で運命をさらけ出してしまう日が。誰にも脇役の日があるのではないだろうか。相手の方が大きく見える日が。見る番、見せる番を互いに大海の波のように日ごとに繰り返しているのではないだろうか。主役は行く先も知らない様子で、横顔だけを見せつけて遠ざかり、影も形もなくなってしまう。運命は大海のように全部繋がって揺れている。相手がいなくなっても、波は残像としてまぶたに残る。残した弱さも、残した見苦しさも、残像となる。その人の去ったあとの大海は、また同じ風景に戻る。
いろんな人と会った。相手の行方は知らない。大海の方でもまた。
今までいろんな人と会ってきた。判らない人とも。弱虫や、優し過ぎ。許せる嘘、我慢できない自慢話、それらはいつも物凄く輝いていた。誰にも主役の日というのがあるのではないだろうか。他人の前で運命をさらけ出してしまう日が。誰にも脇役の日があるのではないだろうか。相手の方が大きく見える日が。見る番、見せる番を互いに大海の波のように日ごとに繰り返しているのではないだろうか。主役は行く先も知らない様子で、横顔だけを見せつけて遠ざかり、影も形もなくなってしまう。運命は大海のように全部繋がって揺れている。相手がいなくなっても、波は残像としてまぶたに残る。残した弱さも、残した見苦しさも、残像となる。その人の去ったあとの大海は、また同じ風景に戻る。
いろんな人と会った。相手の行方は知らない。大海の方でもまた。
PR
今日は茨城で過ごす。
今までは、字を書くことは、自分の混乱した意識を整理してくれると感じていた。でもだんだん、そうではなくなっている。逆転してきたと思う。書く作業が、自分の調和を乱していくようになってきた。
字を書くことは、自分以外の白紙の地平線と接触することであると思っていた。でも、それも違ってきている。字は、どこまで行っても自分でしかなく、自分で接触しないものはやはり字においても接触する筈もない。端から消えていくだけの、砂のようなものだ。
自意識は、退屈な時間であれば眠り、興奮する時間であれば、未来まで快感を先取りしようとする。どこまでもブレて、定まる事がない。
整理するためでなく、地平と接触するためでもなく、記録する為でもなく。盲信でもなく。はけ口でもなく。ここを越えていかなければと思う。
今までは、字を書くことは、自分の混乱した意識を整理してくれると感じていた。でもだんだん、そうではなくなっている。逆転してきたと思う。書く作業が、自分の調和を乱していくようになってきた。
字を書くことは、自分以外の白紙の地平線と接触することであると思っていた。でも、それも違ってきている。字は、どこまで行っても自分でしかなく、自分で接触しないものはやはり字においても接触する筈もない。端から消えていくだけの、砂のようなものだ。
自意識は、退屈な時間であれば眠り、興奮する時間であれば、未来まで快感を先取りしようとする。どこまでもブレて、定まる事がない。
整理するためでなく、地平と接触するためでもなく、記録する為でもなく。盲信でもなく。はけ口でもなく。ここを越えていかなければと思う。
6年前、只の飛行機事故だと思って見ていた。2機目の飛行機が隣のビルにすうっと突き刺さるのを見て、偶然じゃないと初めて気がついた。娘を膝に抱いて見続けた。隣にいた小沼お母さんは、日常の延長のように、酷い事故だと呟いていた。世界が終わり、死ぬ。今から何が起きるのだろう。ビルの全倒壊が始まった時、足先から震えが上ってきた。
「自分たちの」世界が憎しみで壊されている。テロリストの犯行を見た時は確かにそう思ったのに、6年後の今、アメリカという余所の国の私的な事件だったのかと何処か冷めた自分がいる。自分は日本人だけど、何を支持することが自分の解答なのか、テロと闘うという言葉の意味が、全く判らなくなってしまった。イラク戦争の前は、確かに自分達と感じていたのに。……
今日はお母さん友達のSさんとTさんとランチの約束で、S駅に行く。11時半に到着したら、待ち合わせ時間は10時だという。携帯がないため約束の内容を確認出来ず、勘違いを知らせ合う事も出来なかったのだ。二人は1時間半も路上で立ち話しながら待っていたらしい。遅刻最長記録だ。なんという迷惑。その場で切腹したくなる。二人はケラケラ笑って、次回に遅刻したら豪華なケーキセットを奢る事で許してもらった。
「自分たちの」世界が憎しみで壊されている。テロリストの犯行を見た時は確かにそう思ったのに、6年後の今、アメリカという余所の国の私的な事件だったのかと何処か冷めた自分がいる。自分は日本人だけど、何を支持することが自分の解答なのか、テロと闘うという言葉の意味が、全く判らなくなってしまった。イラク戦争の前は、確かに自分達と感じていたのに。……
今日はお母さん友達のSさんとTさんとランチの約束で、S駅に行く。11時半に到着したら、待ち合わせ時間は10時だという。携帯がないため約束の内容を確認出来ず、勘違いを知らせ合う事も出来なかったのだ。二人は1時間半も路上で立ち話しながら待っていたらしい。遅刻最長記録だ。なんという迷惑。その場で切腹したくなる。二人はケラケラ笑って、次回に遅刻したら豪華なケーキセットを奢る事で許してもらった。
夜、離婚の悩みを抱えたお母さん友達から電話をもらい、相談を受ける。励ました。もうそれしかしないことに決める。考えるより励ます。助言が間違っていたとしたら、間違いの責任なんかとれない。相談は自分の魂を消しゴムみたいにすり減らす。
この先誰に相談されようと、励ます。その代わり好きな相手しか相談は受けない。それ以外は拒絶する。そして誰に相談されても、励ます事しかやらない。他の事はしないと決めた。
行きつ戻りしながら何処かに向かっているのだろうか。行きつ戻りつ。パソコンを前にすっごく落ちこんでいる。行きつ戻りつ。明日考えよう。行きつ戻りつ。
電話を切って、日記リミットまで少しの時間になっていた。もう日記をつける時がない。明日まであと14分。
この先誰に相談されようと、励ます。その代わり好きな相手しか相談は受けない。それ以外は拒絶する。そして誰に相談されても、励ます事しかやらない。他の事はしないと決めた。
行きつ戻りしながら何処かに向かっているのだろうか。行きつ戻りつ。パソコンを前にすっごく落ちこんでいる。行きつ戻りつ。明日考えよう。行きつ戻りつ。
電話を切って、日記リミットまで少しの時間になっていた。もう日記をつける時がない。明日まであと14分。
白紙の場所は、日増しに巨大化してきた。
今は書くことだ。もう他にはなんにも持っていない。自分があれもこれも持っていると思うのは間違いだ。とにかくやり続けること。
ひとつ考える。ひとつ消える。他のまわり道をまわる。その道は途中で枯れている。別の道を作ってみる。その道路はわりと長く進んだ。しかし継ぎ目に入ってから見失った。
字を書いて生きていくということは、ただ覚悟の問題なのだ。字は誰にでも書ける。文章は誰にでも作れる。また字も文も必要のない尊い人達が大勢いる。だから、ただ、自分一人の覚悟で、人生と文章は等価だと信じる。
巨大化した白紙に、ひとつ、穴があいた。次はもっと大きい穴をあける。明日はもっとましになろう。
今は書くことだ。もう他にはなんにも持っていない。自分があれもこれも持っていると思うのは間違いだ。とにかくやり続けること。
ひとつ考える。ひとつ消える。他のまわり道をまわる。その道は途中で枯れている。別の道を作ってみる。その道路はわりと長く進んだ。しかし継ぎ目に入ってから見失った。
字を書いて生きていくということは、ただ覚悟の問題なのだ。字は誰にでも書ける。文章は誰にでも作れる。また字も文も必要のない尊い人達が大勢いる。だから、ただ、自分一人の覚悟で、人生と文章は等価だと信じる。
巨大化した白紙に、ひとつ、穴があいた。次はもっと大きい穴をあける。明日はもっとましになろう。