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人間になればよかった...
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体調を崩した。目が覚める度に針が進んでいた。針は一時間後だったり、30分後だったりした。気がついたら昼で、細切れの悪夢も消えた。起き上がって、散らかりはじめた部屋を掃除した。何度も薄目で見た目覚まし時計も定位置に乗せた。一見、全てが元通りになったようで、病の神からうまく逃れたような気がした。
夜に茨城へ着く。電気の消えた部屋の奥で雛壇がそのままになっている。屏風に二人の黒いシルエットが座っている。小物を壊すのを極端に怖れたお母さんが(あるいは単に面倒だったのだろうか?)雛壇を翌日片付けないと女子の婚期が遅れる、という諺を重々承知の上で、私が帰宅するまで待っていたらしかった。お母さん……と私は暗闇に話しかける。お母さん。その後につける言葉は何もない。娘は嫁に行くことが出来ると信じて、明日やる。こんな些事につまずいている訳にはいかない。私は頼りにされている。たとえ私自身が、自分をまるで頼りにならないと感じていても。
H町駅の友人から、就職が決まったとメールをもらう。清掃の仕事らしい。彼女は相当頑張っている。友達として誇らしいと思う。
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