今日は茨城メンバーと旅行、福島県にある水族館「アクアマリンふくしま」へ行って、子どもたちと一緒に魚を見た。北国の魚はなつかしく、南国の魚は夢のように美しい。水族館に普段食べる魚が混じっていると、すぐに素通りしてしまうのだが、何故だか、大勢で群れる鰯の集団が、とてつもなく美しかった。口をあけて、何千もの魚が、目玉を動かしている。水量がたっぷりだと、囚われの魚たちも可哀想な感じがしない。皆、客に体当たりするように、ガラスぎりぎりの軌道を通って泳いでいく。
そういえば、昼食に、マンボウを初めて食べた。刺し身は真白で雪のよう、匂いらしい匂いもない、口に入れると、ぐずっとした口当たりに、舌にまとわりつくような旨味があった。
そういえば、昼食に、マンボウを初めて食べた。刺し身は真白で雪のよう、匂いらしい匂いもない、口に入れると、ぐずっとした口当たりに、舌にまとわりつくような旨味があった。
一晩明けて、自分の性質に腹が立ってきた。怖い奥さんに怒られて、布団でぐったりと寝たおじさんを想像しておくのが良いだろう。これも未解決の判を胸に押して、放っておくことにした。
今日は大人数で遠方のM市へ出かけて、小沼妹さん家の喪服を四着分買いに行く。長いエスカレーターを行き来してデパートの内部構造をひととおり覚えた頃、黒い服は無事に手に入り、デパート印の袋にしまわれて、影は消えた。予定の買物が済んだ後は子ども達の恩恵にあやかって、自分もアイスクリームをご馳走になった。バレエの稽古をしていないなと思いながら、とろけるような味をひと匙ずつ食べた。アイス売り場の店員さんは冷たかった。彼女の厳しい視線にさらされて、アイスを選んでいる余裕はないような気がした。店員さんは同じ調子で、次から次へと人をさばいていた。
今日は大人数で遠方のM市へ出かけて、小沼妹さん家の喪服を四着分買いに行く。長いエスカレーターを行き来してデパートの内部構造をひととおり覚えた頃、黒い服は無事に手に入り、デパート印の袋にしまわれて、影は消えた。予定の買物が済んだ後は子ども達の恩恵にあやかって、自分もアイスクリームをご馳走になった。バレエの稽古をしていないなと思いながら、とろけるような味をひと匙ずつ食べた。アイス売り場の店員さんは冷たかった。彼女の厳しい視線にさらされて、アイスを選んでいる余裕はないような気がした。店員さんは同じ調子で、次から次へと人をさばいていた。
相棒には「脳味噌がゆるんでいそう」と称される私の面相だが、油断が多いのだろう、知らない人からよく道を聞かれる。今日は東京の自宅に戻って、相棒と久しぶりに再会して頬をあからめた。そんな事絶対ある訳ないが、無言で頷き合ったあと、溜まっていた洗濯物を全て片付け、喪服を鞄につめて、深夜、再び茨城へ向かった。
ホームに立っていると、「申し訳ないのだが、ここはどこに着くんでしょうか」と話しかけてきた方がいる。文字どおり右も左も判らない態で、年配の男性が困りはてた様子、乗り換えの説明をしたが不安そうなので、途中駅までご一緒することにした。帰宅が遅いと奥さんや孫に叱られること、東京育ちで所沢あたりはどこも詳しいが、電車は全く利用しないとのこと、会話は普通に成立していたが、乗り換え口で切符売り場を教えたら、たった120円しか持っていない。へんだなと思ったが、目的地までの差額110円を貸すことにし、駅員さんに何番線か確認して、改札の前に送り出した。拝むようにして「お姉さんと別れるのが名残惜しい、こんな変なじいさんに絡まれて、さぞやご迷惑だったでしょう、本当にありがとう」と言うので、「おじさんも御元気で」と別れた。予定外のことで上野駅へはぎりぎり滑り込みになったが、自分の方も無事乗れたからこれはよし。……しかし、車内で思い返すにつれ、次第に、違和感と心配の方が強くなってきた。ちょっとした外出にしては、鞄も上着も持たず、所持金120円でどこに行こうというのだろう。あまりにも身軽すぎるような気もした。人助けと思いこみ、言われるままに乗り換え口まで連れていってしまったが、万一、記憶障害の可能性はなかったのか。自宅に帰れないような所まで運びだしてしまった可能性はなかったか。ああ、しかし、どうしようもない、と窓の外の景色は流れに流れる。もうお会いすることはないのだろうし……。
ホームに立っていると、「申し訳ないのだが、ここはどこに着くんでしょうか」と話しかけてきた方がいる。文字どおり右も左も判らない態で、年配の男性が困りはてた様子、乗り換えの説明をしたが不安そうなので、途中駅までご一緒することにした。帰宅が遅いと奥さんや孫に叱られること、東京育ちで所沢あたりはどこも詳しいが、電車は全く利用しないとのこと、会話は普通に成立していたが、乗り換え口で切符売り場を教えたら、たった120円しか持っていない。へんだなと思ったが、目的地までの差額110円を貸すことにし、駅員さんに何番線か確認して、改札の前に送り出した。拝むようにして「お姉さんと別れるのが名残惜しい、こんな変なじいさんに絡まれて、さぞやご迷惑だったでしょう、本当にありがとう」と言うので、「おじさんも御元気で」と別れた。予定外のことで上野駅へはぎりぎり滑り込みになったが、自分の方も無事乗れたからこれはよし。……しかし、車内で思い返すにつれ、次第に、違和感と心配の方が強くなってきた。ちょっとした外出にしては、鞄も上着も持たず、所持金120円でどこに行こうというのだろう。あまりにも身軽すぎるような気もした。人助けと思いこみ、言われるままに乗り換え口まで連れていってしまったが、万一、記憶障害の可能性はなかったのか。自宅に帰れないような所まで運びだしてしまった可能性はなかったか。ああ、しかし、どうしようもない、と窓の外の景色は流れに流れる。もうお会いすることはないのだろうし……。