今日から娘は新学期。朝、大量のビール缶を片付けていると、送り出した娘から電話、職員室の電話を借りた気配で、習字セットを忘れたからとどけてください、とのか細い声。また忘れ物かと喉まで出かかるが、両手いっぱいに荷物をぶら下げて歩いていった今朝の姿が思い出され、あれじゃ一つ抜けていても気付かないか、と溜め息をつく。自転車に乗って小学校へ向かう。真冬の凍った空気が耳元でびゅうびゅう鳴った。
自分も子供の頃は忘れ物常習犯で、笛だの宿題だの教科書だの、なんでも忘れて学校に行ったが、親が届けに来てくれた事は一度もない。困らせるのが本人の為になるのだろうか。要求を蹴って冷たくすれば良かったか。しかし自分が昔さんざん忘れて、子供よ、おまえはするな、というのは酷い矛盾ではないだろうか。……
校庭に自転車をとめて、閉まった教室のドアを少しだけ開けると、真面目に座っている子供達と喋っている担任の先生の姿が見えた。それから、娘。子犬のようにうるうるした目で、「おかあさん、ごめんなさい」。
自分も子供の頃は忘れ物常習犯で、笛だの宿題だの教科書だの、なんでも忘れて学校に行ったが、親が届けに来てくれた事は一度もない。困らせるのが本人の為になるのだろうか。要求を蹴って冷たくすれば良かったか。しかし自分が昔さんざん忘れて、子供よ、おまえはするな、というのは酷い矛盾ではないだろうか。……
校庭に自転車をとめて、閉まった教室のドアを少しだけ開けると、真面目に座っている子供達と喋っている担任の先生の姿が見えた。それから、娘。子犬のようにうるうるした目で、「おかあさん、ごめんなさい」。
朝、皆で庭掃除。枯れた草の上に真白の霜が下りている。義母は先に作業していて、気持のいい炎が上がっている。娘とチームになって、葉のつもった場所を探してはかき集める。栗も、紅葉も、茶色く枯れている。枯れ葉が貴重なお宝のようで、あそこの下が多い、などと娘の報告を受けては、熊手を背負ってホイホイ走った。
この土地では「火燃し(ひもし)」の景色はありふれていて、どこでも庭で火を使っているのを見る。北海道の冬は風の勢いが強く、たき火にふさわしい日は皆無だった。茨城の冬は風のない日が多い。とても静かな気持になるのは、風のせいかと思う。
さつま芋を灰に埋めて1時間ほど待つと、黄金色に焼けていた。こたつに入ってお茶を飲みながら、焼き芋を分けあって食べた。冬休みのクライマックスが終わったなあ、という気がした。夕方、東京の自宅に戻る。
この土地では「火燃し(ひもし)」の景色はありふれていて、どこでも庭で火を使っているのを見る。北海道の冬は風の勢いが強く、たき火にふさわしい日は皆無だった。茨城の冬は風のない日が多い。とても静かな気持になるのは、風のせいかと思う。
さつま芋を灰に埋めて1時間ほど待つと、黄金色に焼けていた。こたつに入ってお茶を飲みながら、焼き芋を分けあって食べた。冬休みのクライマックスが終わったなあ、という気がした。夕方、東京の自宅に戻る。
おぬま弟さんの第一子が産まれたので、顔を見に家族で出かける。静まりかえった個室をノックして入室すると、ふわりといい匂いがして、弟さんの奥さんの横に、白い布に包まれた赤ん坊が見えた。小さくて、やさしくて、可愛い。ああ、いいなと思う。指でほんの少しつつくと、手で顔を隠して、まだ眠っている。
奥さんの話しだと、出産時の痛みはそんなに感じなかった、という。立ち会ったおぬま弟さんの証言でも、最初から最後まで落ちついていて、安心して付き添えた、のこと。自分の出産の時は、大暴れして何も覚えていないし、記憶も飛び飛びで、夢の中で産んでいたような気さえするのに、何という違いだろう。やはり人によって体験も随分違うようだ。
奥さんの話しだと、出産時の痛みはそんなに感じなかった、という。立ち会ったおぬま弟さんの証言でも、最初から最後まで落ちついていて、安心して付き添えた、のこと。自分の出産の時は、大暴れして何も覚えていないし、記憶も飛び飛びで、夢の中で産んでいたような気さえするのに、何という違いだろう。やはり人によって体験も随分違うようだ。