土曜日、茨城。義母と娘と三人で外出、近所のショッピングモールで昼食を食べた。ピザ食べ放題の洋食屋さんで、娘は満足気に何枚もおかわりしている。義母は時折、娘にじっと視線を向ける。義母は自分自身でわがままを発散したりはしない。黙々と、淡々と、日々を生きている。趣味はなく、堅実で、常識的で、けっして無駄遣いをしない。娘はわがままを言うことで、義母をとても喜ばせている。娘が欲しいといい、楽しいといい、あれがしたいと言うことが、義母の生き甲斐を刺激している。甘えは悪、自己主張は相手を怒らせること、と子どもの時に思っていた私は、娘がとても羨ましくなる。そして、実際のところは、どうして人と人がこのように付き合う事が出来るのか、未だに判っていない。
食べきれない量のピザを頼む娘と、それを心から喜んでいる義母……それは、自分の目から見ると、理解を越えていることだ。
食べきれない量のピザを頼む娘と、それを心から喜んでいる義母……それは、自分の目から見ると、理解を越えていることだ。
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今日は、相棒の44回目の誕生日だった。金がなくても盛大に祝おうと、好物ばかりをテーブルに並べて、壁に娘が手作りしたお祝いカードを一面に貼り付けた。相棒と私は、普段食卓であまり喋ることはしないのだが、娘は、お父さんもお母さんも何か喋ってよ、と言う。確かにパーティなのに静かすぎた。私は、今日I駅のホームで男性が電気剃刀でヒゲを剃りながら降りてきた話をしようと思ったが、ハレの日なのにそんな話題はいまいちだなと思って、言うのを止めた。娘を喜ばせるような話が思いつかなかった。それでまた、しばらく静かさが続いた。相棒は、コロボックルの事を今ネットで調べている。彼等は○○島の先住民だった可能性が高い、と淡々と話し出した。
別に今更そんなこと、と人は笑うかも知れないが、コンビニで接客しながら、店員の私は危険から身を守る意味でも、笑顔は大切だと思うのだった。接客に使う明るい声も笑顔も、店員にとってのライフガードであるのかも知れない。何かされた訳ではないけれど、レジ台を挟んだ距離がありがたい、という気持もあるのだった。
今日はそんなことを思いながらレジに立っていたら、常連さんの一人が何となくひょろひょろやってきた。特徴的な帽子を被った、伊達男といった風情で、年齢は還暦越えたばかりとご自身で言っていた。週一しか働いていない私だが、初対面で名前を名乗られたので、Oさんという名字まで知っている。いつも新型の携帯を見せびらかしたり、若いお嫁さんをもらった話などして、伊達な話題なのだけど、今日は『よお、ねえちゃん久しぶりだな』と言ったきり、何処かいつもと違う気がしたのだけど、財布を取り出しながら『オレの、長男が、死んでさ』と急に言った。えっ、と聞き返すと『これから、病院の支払いに行ってくるんだ』と、本当だという感じがした。何と言っていいか判らず、隔たっているレジの棚を感じながら、お寂しいですね、とようやく言葉が出たが、Oさんは不思議な表情で『まあ、まだ、次男が残ってるから』と答えた。話してどういう反応が欲しかったのか、何故それをコンビニの店員に話す気になったのか、判らなかったけれど『ありがとう。またくるわ』と言ってOさんはひょろひょろ歩き出した。その後しばらくは、なんとなくその関わりが胸に残って、今もひっかかっているのだった。
今日はそんなことを思いながらレジに立っていたら、常連さんの一人が何となくひょろひょろやってきた。特徴的な帽子を被った、伊達男といった風情で、年齢は還暦越えたばかりとご自身で言っていた。週一しか働いていない私だが、初対面で名前を名乗られたので、Oさんという名字まで知っている。いつも新型の携帯を見せびらかしたり、若いお嫁さんをもらった話などして、伊達な話題なのだけど、今日は『よお、ねえちゃん久しぶりだな』と言ったきり、何処かいつもと違う気がしたのだけど、財布を取り出しながら『オレの、長男が、死んでさ』と急に言った。えっ、と聞き返すと『これから、病院の支払いに行ってくるんだ』と、本当だという感じがした。何と言っていいか判らず、隔たっているレジの棚を感じながら、お寂しいですね、とようやく言葉が出たが、Oさんは不思議な表情で『まあ、まだ、次男が残ってるから』と答えた。話してどういう反応が欲しかったのか、何故それをコンビニの店員に話す気になったのか、判らなかったけれど『ありがとう。またくるわ』と言ってOさんはひょろひょろ歩き出した。その後しばらくは、なんとなくその関わりが胸に残って、今もひっかかっているのだった。