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人間になればよかった...
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書き物の〆切が近くなってきたので、相棒に娘を預かって貰って、今日は家に閉じこもっていた。体温が低下し、食欲が異常に増して、立ち上がったり座ったり、資料を読み返したりして、とにかく考え続ける。判らない箇所は途方もなく広がって、いつも収集がつかなくなるのだけど、一旦は原稿をぐちゃぐぢゃにするのが自分のやり方だ。全体をつらぬく核が見つかれば、そこが脱出口。見つからなければ、物語の迷宮から出られない。成功すれば、〆切直前に急速に冷え固まるようにして話が出来るし、失敗すれば、依頼者に渡すことの出来ない、無意味な言葉の断片で出来た巨大な球になる。自分が納得いくまで話を作るという贅沢は、もうしてはいけないと誓う。依頼者がある以上、ごめんなさい、球が出来ました、では済まされない。
夜遅くに相棒と娘が帰ってきた。ただいま!と抱きついてきた娘の髪が外気で非常に冷たかった。おかえりと返事しようとしたら、自分は失語症気味になっていて、ああ、うう、みたいな感じで声が出た。原人になっているのだった。
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朝、今日は東京の自宅で目を覚ます。10時間も眠っていた。
お昼から、幼稚園の同窓会に娘を連れて行く。園の門は開放されて、見た目は以前と何も変わるところがない。大勢の子どもたち、変わらない先生、昔住んでいた街の景色。娘を置いて、一人で喫茶店でも行こうと歩き出す。見慣れたものばかりだ。この街はあんまり想い出が多すぎる。娘の柔らかい手をひいて、いつもこの道を歩いていた。時折落ちている花片や、木の葉を拾いながら。
自分だけでなく、娘も歳をとっていた。娘は帰り道、みんなの顔が変形していた、と発見のように私に教えた。
相棒に夕方から娘を預かって貰って仕事をした。仕事はまだ火がとろ火で、中身が燃え上がるまで進んでいない。周囲に人がいると書けない夕鶴タイプなので、相棒の助けが本当にありがたい。二人は映画に行ってくるといって、手を振って出かけていった。誰もいなくなった部屋で、閉めきった部屋で一人、機織りみたいに字を書いていく。まだ判らない空白が沢山ある。
昔は恥ずかしい話だけど、食べて、吐いて、高温の風呂に入って、寝て、書いて、食べて、吐いて、というサイクルを延々繰り返して書き物をしていた。だから仕事をしたら物凄く痩せた。良い書き物があがる訳ではなく、ただ自分の弱さからそうやっていたのだが、今は家族もあり、性格も多少は変化したので、そういう自虐的なやり方はなくなった。ただ自分は書くことにすがってここまで来た人間で、思い返してもあの当時はそれで仕方がなかったように感じている。今はもっと違う世界の見方で、もう少しまともな動機から字を綴りたいと願っている。今日は楽なペースで進める事が出来て、ほっとした。
見ていると、書く端から字が死んでいく。読み返したり、遠目で眺める事も必要だけど、じっと見ていると堅く硬直して、意味のない羅列になる。我慢して見つめているとまた動き出すので、すぐ消さないで少し待ってみる。自分は書き終わった文章に興味があるのではなく、書いていく作業自体に強い関心を持っている。なにをやっているんだろう?という感じ。
点と線と曲線。一文字が一日の暗喩なら、文章は一週間の暗喩、一年、十年、そんな風に生きた運動を重ねていって、句読点がうたれ、全体で正体が判るということ、今更のように驚く。字もやはり命の仲間に違いない。無機質のようで、寿命まである。やはりおろそかには扱えない。
字に限らず、なんでも仕事は一生懸命やってみるものだ、と思う。その仕事固有の面白さが少しずつ判ってくる。字に私の命を分け与えるのではなく、字が私に形をくれるのだ。私は不安定な曲線の羅列から、いずれ安定した真直ぐな線になるだろう。真直ぐな線は、心電図が停止した後の映像にも似ている。曲線の無意味な羅列は、生命そのものだ。字の仕事を通じて、良い曲線を重ねられたらと思う。
東京に珍しく雪が降った。雪を見ると心底ほっとする。育ちから来る感情というのは、意外に自分の中に深く根を張っている。ただ、こちらの雪は道路に着くなり溶けてしまって、降る雪も張り合いがなさそうだ。書き割りの景色のように、ただ見るだけの雪みたい。
誰も彼も傷ついているのだから、今更、自分の傷を見せびらかすにはあたらない。悪い日はあってもいいのだと思い直す。悪い日なりにましな日に近づけたい。
頭が重たくて顔があがらない。デタラメに限界値まで働いている。命令違反して休んでいると、頭が痛くなる。命令の声のきつさは自分の意志とは思えない。三本指は転換期を迎えている。早く仕事を進めないと。意地をはって日記を続けている場合ではないのだろうか。もう見せたい自分もいない。自分の外側が死んでしまったみたいだ。
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