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人間になればよかった...
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かけぬなら しぬきでかこう ホトトギス
かけぬなら あそんでみよう ホトトギス
かけぬなら ねたあとかけよ ホトトギス
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茨城でも桜が満開の時期になると、ここもあそこも桜だったか、と存在に気がつく。八重桜やしだれ桜など、個人のお宅の庭にも意外と植えられているようだ。今日買い物に行った野菜の産地直送店では、駐車場の周りがみな桜で、東京で見逃した満開と散り際の綺麗な瞬間に立ち会うことが出来た。ひらり、ひらりと、寒空の下落ちてくる。買った筍や菜の花を袋にぶら下げて桜を見ていると、いいようのない静かな喜びがわいてくる。この画を胸にしまっておいて、辛い日には思い出そう。
東京の自宅に着いてすぐ、今年初めての筍を茹でた。栄養はほとんどないそうだけど、これは人の感謝の心を養う食べ物ではないかと思う。命が短く、掘るのも大変、茹でるのも大変、それで栄養がない、手間暇だけを食すようなものである。たぶんそれが食べる人の心に反応するのだろう。
古い切り株にキクラゲが生えていた。茸には詳しくないが、きっと間違いないと確信する。手にとって透かしてみると、象の耳のようで、微笑をさそう。捨てがたいものがある。ゆでて食べてみようかと思いながら、これで茸に当たって死んだりしたら、と、握ったりもんだりして家に戻る。
女が3人、義母と娘とわたし、わたしが調理担当だから、キクラゲを料理に混ぜ込むことは可能だ。もし本物なら生だからおいしいわ、と義母が言う。わたしはそれを台所のよく見える棚の上に置き、決断を引き伸ばすことにした。
象の耳の親戚は、結局、朝から夜までそこにいて、私達3人が暮す有り様を無言でご覧になったあと、夜、元の自然の土の上に戻された。
いつもの金曜の旅。茨城に着くと、迎えに来てくれた義母が片足をひきずっている。先週、動物園に出かけた際に痛めたらしい膝が、ひどく悪化したのだ。歳をとると膝の骨にグリスがきかなくなるんだっぺ、とお母さんは笑っている。私がきりんに見とれて写真を撮っている間、そういえばお母さんは手すりに掴まっていたのを思い出す。きっとあの時からもう痛かったのだ。
深夜にパソコンに座っていると、この土地での役割で頭が一杯になる。もう一人の自分と場所交代して暮しを取り替える感覚だ。庭の草刈りを始めなくては。仏間の花を買いに行こう。些事の積み重ねの先に、どれほどの良い関係を築けるか、まず自分の我を折る。何度でも誓い直す。茨城時間は旅行のようでも、一週間の半分近くを過ごしているのである。
茨城の桜はまだ咲いているそうで、場所によっては満開か、散りぎわが見られるらしい。明日近くに桜がないか捜してみよう。
少し肌寒い日。遠出して娘と一時間半電車に乗る。試験の時には絶対落ちたと言って泣きべそをかいていた従妹のMちゃんが、今日はスーツ姿で入学式だった。上京イコール貧乏暮らしという連想は古いらしく、Mちゃんの部屋は綺麗でセキュリティも万全、スタートから東京している。お茶と一緒に出されたお菓子は、北海道のなつかしい銘菓だったけれど。
Mちゃんの顔に寂しさはあまりない。東京中で沢山の人が新しい暮らしを始めているのだろう。電車の複雑な路線図を見上げ、大気の汚れに健康への不安を感じ、標準語の流暢な響きに驚かされて。Mちゃんの喜びが東京の街に吸い込まれていく。娘と手をつないで帰りながら、いつか娘を送り出す日の無限の遠さに、すこしほっとする。
若い時から快楽に慣れ切ってしまっては、歳をとってからどんなにせつない目にあうだろうか。まだ未来は存在していない。良い生き方とは何か、あちこち目移りしている内に、生きてもいない生き方に対して贅沢になってはいなかったか。耳ばかり育ててしまって、指を動かすことから始めるのではなかったか。贅沢をしている場合ではない。今やろう。未来は存在していない。
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