明日はバイトの日、僅か一日半の滞在で茨城から東京へ戻ることにした。義母に、来週また来ますと話して、手を振って特急電車に乗り込むと、正月三日ラッシュのピークで、乗車率150パーセントのアナウンス通り、乗り込む時点から困難な旅となった。見知らぬ人達の隙間に親子で入れて貰って揺られていると、私の立ち位置などまだ良い方で、車両と車両の連結部分に立っている男性もいる。自分達親子の体が押し出し式に男性を、その不自由な場に追いやってしまったのだ。蛇腹になっている部分が酷くガタガタいって、音が鳴る度にその人は足をふんばっていた。私はその方の靴ばかり見ていた。周りの人達は殆ど誰も喋らなくて、その場にいる全員が苦行をしに来たかのようだった。トイレ前のスペースだったから、滑り込むように人混みをかき分けてくる方もいた。ペーパーがからから回り、水を流す音がよく聞こえた。使う方も、聞く方も、仕方がないのだった。地獄とはこんな場所だろうか、と、ふと恩師の話を思い出した。足の踏み場もないほど人がいて、皆で仕方なく永遠の責め苦を受け続ける。だが、天国より地獄の方が良い場所だ。人が沢山いる筈だから。そんな話だった気がする。
靴の主は、実に良い方だったらしく、途中下車する際に娘に一声かけて、『お嬢ちゃん、後ろの席、あくよ』とそっと言付けして下さったらしい。席には結果的に座れなかったが、その方の親切はとてもありがたかった。
靴の主は、実に良い方だったらしく、途中下車する際に娘に一声かけて、『お嬢ちゃん、後ろの席、あくよ』とそっと言付けして下さったらしい。席には結果的に座れなかったが、その方の親切はとてもありがたかった。
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