茨城、曇天。義母と娘とで庭のさつま芋を掘った。さつま芋畑は葉っぱと茎が一面に広がっている。義母の指示にしたがって、娘が軽い体重をかけてスコップを踏む。土はなかなか掘り進まない。ふたりは実に楽しそうに、あそこだここだと芋を探しあてる。この家の作物は、春夏秋冬ほとんど全て、孫である娘に収穫させる為に植えられている。これが一体娘の中でどの位幸福な思い出に育ち、何を残すことになるのか、その影響は計り知れないだろう。一方、自分は二人を手伝いながら、いつも一抹の寂しさを感じていたのだが、考えてみれば昔から、このような役回りの星の下に生まれついたのであり、主役級の暮らしには耐えられないのだから、この地味星をひっそりと行こう、と思いが定まった。その日から嘘のように上手く会話できるようになり、良い循環で廻りだしたのだから不思議なものだと思う。掘り出した芋達を抱き上げると、赤ん坊みたいに丸々と肥っていた。
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