電話帳の下に埋もれた古い電卓を見つけて、これは99ショップの練習に丁度いいなと思い、税込み104円の個数を繰り返し叩く。昨晩明け方に到着した3人の子供達は、娘と合流して家の廊下を走り回っている。104円かける4は、416円か。と子供の頭数を金額に換算して、今年は随分おだやかな夏だと思う。以前のように組み合って喧嘩することはなくなったし、話すことも筋が通っている。たった一年で起きた変化に驚かされながら、育つなあ子供、と思う。私は電卓とデジタル数字をにらみながら、104の倍数を暗算しようと、もう10分も続けているのに覚えられない事に気がつく。昔は天才児と呼ばれたものだが、と呼ばれていないのに記憶をねつ造して、窓外を眺める。炎天下の畑に416円達が走って行く。赤いトマトと黄色いトマトが鈴なりに実を付けている。完熟しているのを、手でちぎっては口に入れている。
PR