忍者ブログ
人間になればよかった...
[200] [199] [198] [197] [196] [195] [194] [193] [192] [191] [190]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

いつも利用する茨城のI駅は、冬は驚くほど冷たい風が吹きつけてくる。義母と娘は互いに抱きついて暖をとっている。私の体は堕落してしまい、北海道育ちの取り柄もなくなってしまった。特急電車の車内に入ると、暖房がききすぎるほどで、冷え切っていた身体が解凍された。座席に深々と背をもたれてしばらく眠った。
小学1年の時、吹雪の中を集団下校させられたことがあった。私は一つ違いの姉と手をつないで、真白い世界を意気揚々と歩き出したのだが、斜めに吹きつける雪を浴びて、前に進めなくなってしまった。風は酷くなるばかりで、視界は奪われ、長靴は脱げ、しまいには前後左右全く判らなくなった。家に帰る20分の距離でほとんど遭難しかかっていた。姉と二人で大声をあげて泣いた。人影はなかった。一体どの位時間が経ったのか判らないが、顔をあげると、知らないお姉さんが立っていた。
制服姿で中学生か高校生かは判らない。私は雪女と会ったと思った。きれいな人だったから。その人は、涙と鼻水で濡れた私達の顔をハンカチでぬぐってくれ、私達の頭を優しく撫でてくれた。そして『…………』と、言った。その人も全身雪だらけだった。
電車の座席で目をあけると、隣で娘が口をあけて寝ていた。随分と古い記憶で、してもらった行為の輪郭だけが残っているのだが、未だに感謝の念を抱いている。家に辿り着いた時、私はその人に向けて、目をつぶって、御礼を祈ったのだった。『…………』は、今では様々な言葉をはめ込むことの出来る場所として、無限の励ましの場所としての、記憶の空白となっている。
PR
<< 置物 HOME >>
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新記事
(02/27)
(02/26)
(02/25)
(02/24)
(02/23)
(02/22)
プロフィール
HN:
北海のあざらし
HP:
性別:
女性
ブログ内検索
カウンター
携帯用
アクセス解析
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © 三本指日記 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]