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人間になればよかった...
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二週間に一度位、親しい友人から電話がかかってくる。彼女の近況報告と、悩み相談を受け、場合によってはその日のうちに会いに行く。ここ数年、友人は幻聴と幻視に苦しんでいたが、今は回復中で元気で暮らしている。今日は雑談だけで電話を切った。
数ヶ月前、この友人の付き添いとして初めて精神科に行き、彼女の担当医と会ってきた。つくづく思うに、人間の心くらいどうにでも変化するものはないと思う。それは友人もそうだし、サポートに回る自分自身もだ。専門知識を持たない善意の他人がボランティア精神で格闘し、力尽きていく事は実にありふれた光景らしい。専門職ではない自分も出来ることが限られている。それは友情の目方、と呼んでもいいだろう。
私は友情の限界を知って目方以上の行動はとらないと決めている。ここ数年彼女と共に過ごした事で出来てきた自然な流儀だ。他人の心の中心部分は、その人本人しか触われない冷たさで出来ている。「他」という感覚は私にとっては異質で凍り付くような場所だ。数々の修羅場の中で、私は自分が自分の背負える以上のものを背負っていなかったか思い知らざるを得なかった。また彼女は、そんな未熟な私でも必要としてくれた。
それにしても女医は凄かった。白衣も着ずに座っていて、鉄面皮のように友人の話を無表情で受け止めていた。勿論、職業上必要な冷静さではあるのだろうが、朝から晩まで予約で一杯の診察室で、果てしなく続く患者の訴えを次から次へと処理していく過酷な日常がしのばれた。ここまで訓練するのにどんなにか大変だったろうか。
帰り道、はっきりと考えた。私は答えも知らないのに友情を維持している。
友人は自分の近況を細かく報告してくれる。もう腐れ縁だと観念しているので、彼女の調子が下にさがっていると私も凹むし、もうお互いの幸福に辿り着くまで、長年付き合っていく相手だろう。運命共同体だと思っている。
私はあの女医を時々思い出す。そして私は友情の目方を時々握ってみて、やはり重さがあり、限りがあることを確認する。それは今日のようなささいなやりとりで日々重さを増している。
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