忍者ブログ
人間になればよかった...
[152] [153] [154] [155] [156] [157] [158] [159] [160] [161] [162]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

朝からすっからかんに晴れている。何も考えられぬ。食事の度にお魚がのぼる。カレイ、アブラコ(あいなめ)、アジ。私の身体の中で変化が起きている。このままでは妖怪あざらしに変身してしまう。なんとか食い止めなくては。…
今日は天気がいいので、娘と母と三人で市営プールに行ってみることになった。母は五年ぶりに水着を着たと言って喜んでいる。町にはなかなか立派な施設が出来ていた。水は昔と違って適温に保たれている。母は孫と嬉しそうに水につかっている。私は茨城で買った水着で、娘と年老いた母と泳いでいる自分にふと気がついた。過去現在未来は、なんということはない、同じひとつの事の呼び名なのだった。私は背泳ぎして、ぷかー、と天井を見た。跳ねた水滴が顔を濡らす。私達はたった一時間を、しみじみと楽しく過ごした。
夜はホタテとカニの鉄砲汁。母が明日の朝食べるお魚を用意している。水泳のせいかやたら眠い。顔を見ると、ピンと伸びたヒゲが生えている。変身は時間の問題だ。仕方なくヒゲにも美容液を塗って寝ることにする。
PR
今日も携帯で書いている。改行の仕方を相棒から教えてもらい、これでしのぐことにした。
飛行機で追い越した台風が、今日ここまで上ってきて、雨が滝のように降ってくる。朝、昼、夜、必ずお魚が食卓にのぼる。鮭、ホッケ、さんま、マス。三十年間全く同じ流儀で暮らしているのだ。
お昼過ぎに弟の家に遊びに行く。お嫁さんに会うのが帰省の楽しみのひとつである。お嫁さんになった女性は、高校の時の部活の先輩だったので、親戚になった時は、なんだか不思議な気がした。先輩が義理の妹になった今でも、敬語を使っている。
夜は姉夫婦と子供達が再び来てくれる。立派な花咲ガニをいただいて、その場で包みを開いて皆で食べる。花咲はトゲがいっぱいついたカニだ。去年町で開かれたカニ祭りの早食い大会では、口と鼻の頭を深く切って、血だらけで病院に行った人が出たとのこと。
今日の日記は携帯で書いている。字がすぐに書けないのでじれったい。実家に着いたら、あった筈のパソコンは消滅していた。なんでも使いこなせなくて腹が立ったから、インターネットなども全部解約したとのこと。テレビではアメリカで橋が崩落した悲惨なニュースをやっている。母が畑からお味噌汁の具を取りに行くの手伝ってと、いう。外はとにかく寒い。家の裏に生えている蕗が人間の背丈位ある。雑草も全体的にふてぶてしい。野生の草と農作物が一体になっている。採れたてのエンドウ豆を水道で洗うと、水の冷たさにはっとする。 食器棚の一番いい位置には、お酒のワンカップの空きコップが十数個も並んでいる。落としても絶対に割れないから、具合がいいらしい。 夜ご飯のあと、姉夫婦と子供達が遊びに来てくれた。宴会では父が白鳥の肉は最高にうまい、という話を語っている。明日から毎日更新をどうやったらいいのだろうか。今夜はとにかくこれで終わろう。
東京に戻る日。長く留守にするので旅支度に手間取る。家中に点在している私物を見つけてトランクに詰めるのは、難易度の高い宝探しゲームだ。あれもこれも、どこにしまったのやら、探しているうちに家の中を何周もしている。はっと気がついて、机の上に置いたままの食べかけの団子の存在を思い出し、串を頬ばって片付ける。危ないところだった。メガネだとか、靴下だとか、どこに消えたのか判らない。こんなに探しても出てこない宝など、もういらんと思い、幾つかを置き去りにしたまま出発することにする。
お昼過ぎにI駅でお別れ。家族総出で送ってくれるのが嬉しい。夏休み中盤にまた会う約束だ。子供達は喧嘩もせず、さよおなーらーと言う。それでは行ってきます、と私が言うと、大人達まで両手をふって応えてくれた。座席につくと元気でねえーと声がする。遠ざかっていく電車の窓から、子供達が線路沿いをどこまでも走って追いかけてくるのが見えた。
……一時間後、目を覚ますともう着いた。心はまだ茨城だ。上野駅はむっと暑い。東京の街が何故か茨城のトウモロコシ畑の記憶と重なる。心がまだ茨城だ。山の手線の先頭車両に乗ったら、銀色の線路がどこまでも続いているのが見える。
夕方、自宅でおぬまさんと会う。娘が抱きついて再会を喜んでいる。私は抱きつく訳にもいかないから黙ってニヤニヤした。一週間なにもなかったな、と言っているおぬまさんには、見た目もそれ程の変化はないようだ。私の方はかなり肥ったのだが。
部屋もほとんど綺麗なままで、観葉植物も枯れていなかった。なんと、水をやってくれていたのだ。つくづくおぬまさんは優しくなったと思う。
夜はもんじゃ焼きの店に行き、三人で再会の乾杯をする。帰り支度をして会計に立ったら、最後の焼きそばをまだ出してませんでしたと店員さんに謝られ、あわてて座席に戻って、生のそばを受け取る。
防犯セキュリティは猫の身長位では鳴らないそうだ。では、真犯人は何処にいるのだろうか。私は昨夜の猫をまだ疑っている。だって犯人かって聞いたら、にゃあんて言ったもの。言ってないけど。
本日、賑やかな子供達はボケモンの映画を観に出かけた。がらんどうになった畳の部屋で、我が娘が背中を落として座っている。諸事情でやむなく別行動をとった訳だが、娘のしょげようといったらない。私は今日娘に何かいい出来事をプレゼントしようと決めた。近所のスーパーにあるゲームコーナーは娘が最も好きな場所の一つだ。100円を5枚渡して、今からこれでゲームをしにいこう、と言うと娘の顔にぱっと光がさした。私は自分の子育てに不安を感じる。だけど、娘が飛び上がる程嬉しがる出来事を他に知らないのだ。
店に着いたら丁度10時で、入口では沢山の大人達が開店を待っていた。自動ドアが開くと同時に、娘は勢いよく中へ駆けだしていった。
私は人を苛めるのは疲れるから嫌いだが、自分に対しては遠慮なく自虐してきた。失敗に事欠かないから種は尽きない。私が自虐の苦い味を噛みしめて悦に入っていると、娘だけはそんなことやめてと言う。私は彼女から愛されているらしい。愛しているが、される方に関してはよく判らない。最も恐ろしい空想は娘の死である。妊娠、出産と同じ位、自分の死は、対象が自分なら、死んでみると苦しいながらも、為せば成ることなのは明白だ。だけど、娘だけは、永久に生きてほしいと思う。これはエゴなのだろうか。
娘を忘れてスーパーで買い物。今晩のおかずは餃子にしようと、買いもらしがないか何度も頭で確認する。大人数だからすべて普段の倍量だ。重たい袋を下げてゲームコーナーに行ってみると、全身を使ってゲーム機のボタンを叩いている娘の後ろ姿が見えた。
明日は東京に戻る。明後日はもう北海道に飛ぶ。今夜でここの皆とはしばらくお別れになる。
夜、おぬま妹さんと餃子70個作る。白ネズミが並んでいるようだ。どこかの国でも餃子をラットケーキと呼ぶらしい。ホットプレートで焼いて、こんがりと奇麗な焼き目がついたところを皆で食べる。
小沼邱から車で5分の場所におぬまお父さんの墓地がある。今日は大人達だけでお墓の掃除に出かけた。
車から下りると、石に掘られた『小沼家』の文字が目にはいる。相変わらず風景がとてもいい。田んぼの上を渡る涼しい風が吹いてくる。生前のお父さんはこの場所をとても気に入っていたということだ。
バケツをぶら下げて、旧式の手押しポンプの井戸で水を汲みに行く。きこきことハンドルを力一杯上下させると、清らかな水が突然ダバッとあふれた。
貴重な水を節約するようにして、墓石を磨き始める。炎天下の為に枯れてしまった供花の茎には沢山のカタツムリがついている。カタツムリは普段好きな生物だが、こんな風にびっしりだと無気味だ。掃除しても幾つでも出てくる。黄緑の殻で見たことのない種類だ。カタツムリを掃除しながら、透明な水にスポンジをひたして、注意して墓石を磨く。
死後の事実。直に受ける痛ましさ。人の手が入らなかったらたちまちの内に朽ちていく。私もここに入るのだから自分の運命でもある。生きている者の空想にすぎないのだろうか。弔うなんていうことが。
だけど、空想であってもいい筈だ。カタツムリが這うに任せるという空想を選ぶ訳にはいかない。生きている人の身体にするように丁寧に磨く。濁った水を捨ては汲み、捨ては汲みして、澄んだ水を繰り返し使う。手のひらを使って、少しずつかけていく。最後には何もかもが清潔になって、墓はすっかり見違えた。みなで仕上がりを眺めた。車に乗り込む前に振りかえると、濡れた『小沼家』の字が風景とよく調和していた。
夕方、子供達と一緒に回転寿司に行く。家中の雨戸を閉めて、念入りに用心して家を出た。一時間後、満腹になって帰宅すると、玄関の足元に黒い影が走った。影はさっと素早く駆け出して、警報システムの前で振り返った。猫である。泥棒の正体はおまえなのか、と心で問うと、猫は黙って瞳を光らせている。
カレンダー
01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
最新記事
(02/27)
(02/26)
(02/25)
(02/24)
(02/23)
(02/22)
プロフィール
HN:
北海のあざらし
HP:
性別:
女性
ブログ内検索
カウンター
携帯用
アクセス解析
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright © 三本指日記 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]