茨城の夕暮れ、義母と娘がトランプで遊んでいる。ふたりは何の音も立てず、手元のカードを扇のように広げて向かい合っていた。
玄関に出ると、枝に、梅が白い花をつけている。冷たくなってきた風に吹かれて、寒そうな景色に見える。死んだ人が、石の上を歩いてきた。私の記憶のなかで一場面だけ再生されるその人の影は、当時と寸分違わぬ姿で何かを喋っている。その顔は装置の不具合で歪み、その声は古い状態のままで保存されている。その記憶装置は、今何の為に動きだし、何の為に、生きている私の現在の時間を、交差するのか知らない。
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