八歳の娘が、「時間がたつって、いいことだね、ママ!」と不意に言った。夕暮れの東京は、すれ違う人皆忙しそうで、私もまた重たいカートを引きずって、脇目もふらずに家路に向かっていた。一刻も早く帰りたかったのだ。私は返事をしないで歩いていたが、娘は、ママ、お話きいてた?と袖を掴んで言った。
私は、最近は、時間が経つのが怖かったなあ、とぼんやり考えた。浪費を惜しむあまり、ケチケチして、守銭奴のように、一分だって惜しむ気持だった。取り返しのつかない事態に陥る気がして、身辺の整理にばかり関心が向いていた。
さっきまでは、一刻も早く帰りたかったのだ。娘の手をひいて、重たいカートを引きずって。時間が経つのは、怖ろしくて、厭なことだとママは思っていたんだ。
娘は時々、私に新しい言葉を教えてくれる。
私は、最近は、時間が経つのが怖かったなあ、とぼんやり考えた。浪費を惜しむあまり、ケチケチして、守銭奴のように、一分だって惜しむ気持だった。取り返しのつかない事態に陥る気がして、身辺の整理にばかり関心が向いていた。
さっきまでは、一刻も早く帰りたかったのだ。娘の手をひいて、重たいカートを引きずって。時間が経つのは、怖ろしくて、厭なことだとママは思っていたんだ。
娘は時々、私に新しい言葉を教えてくれる。
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