土曜日は茨城の小沼邱で草刈りと決めているのに、小雨が降っていた。義母は、まだ草がそんなにのびてないから、いいよ、と言う。冬の色になった庭が、ガラス越しに見える。こたつの上に山積みになったみかんの色が、濡れた窓外に置かれているように、外と内と直につながっている。北海道のぞっとする寒さが、急に全身に感じられて、どうして冬になってしまったかな、と思う。私はあそこで窓を見ていた。誰一人歩く人もなく、一台の車も通らなかった。雪が平たい丘を白く変えていた。私は茨城に来る事を知っていた。いつかここで、この人と会って、庭の話をするんだと知っていた。だから、あの日、このみかんを雪景色の中に置いて、待っていたのだった。白い中に、ぽつんと一個だけ落ちていた。心細い気持で、庭を眺めた。
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