折れた鉛筆

運動会の振替休日２日目。娘は暇があると漫画を読んでいる。最近勉強を見てやる機会を増やしたが、本当に呆然とすることばかりだ。まず、わからない時にすぐ暴発して、ぐちゃぐちゃに線を引いてしまう。あとは長く座っている事が出来ない。字を丁寧に書く根気がない。今日は算数をしたのだけど、割り算の簡単な式で、無理、といって鉛筆を投げてしまった。
怒らずに調べていくと、国語算数は少なく見積もって二ヶ月分ほどは遅れていた。もしかして三ヶ月分かも知れない。今年から小学校の授業はゆとり教育の見直しで学習量が増えている。それも考慮すれば、普通の状態に追いつくだけでも困難だということが判ってきた。学級崩壊の犯人捜しをして溜飲を下げても仕方がない。集団心理の問題である以上、この状態は親の一人である私自身の責任でもある。しかし、この問題がこんなに辛い気持を呼ぶとは思わなかった。

新聞紙

９９。売れ残りの朝刊を紐で結わえる仕事をしていて、ふと、政治家Ｎ川氏死去、の記事と顔写真が目に入った。紐を顔にかけるのに何となく抵抗を感じ、裏に返して結わえて出した。外は今にも雨が降り出しそうになっている。メディアがさんざん笑いのめしたＧ７上での酩酊会見、あの印象のまま死んだ。
よれよれの９９の制服に、ぽつん、ぽつんと雨が落ちた。来週には店の全部が新しくなるので、今日が着納めだ。交差点を行き交う人が、傘を広げた。

運動会やり直し

青空の輝く下で、２回目の運動会。今度は傘の心配なく校庭に向かった。子どもたちは一生懸命走っている。
この小学校担当のスクールカウンセラーの方と５分ほど話をした。存在は知っていたが、きちんとお話するのは初めてだった。歓声と音楽の下でお互いの声に耳をよせて、今後の対策などについて話した。保護者は保護者だけで動いているし、学校はまず内部だけで動こうとしている。カウンセラーの先生は年配の女性の方で、冷静にね、と優しそうな目で自分をじっと見た。この問題は慎重に対処しましょう。
娘のクラスを見ると、今日は真面目に参加していた。暴れん坊の男の子も全力で走っていた。やっぱり集中している子どもの顔はいいなあと思う。

運動会中止

早朝に目覚まし時計が鳴り、寝ぼけ眼で外を見る。今日は娘の運動会、予報では雨だったのに晴れている。お弁当の材料を保険で買っておいて良かった、とお重を作って校庭へ向かった。予報では雨でしたが…今日開催できて良かったですね、…などと校長先生が言っている間に、冷たいものが顔に当たった。応援合戦と準備体操の途中で小雨がぱらつき、次第に冷たい雨が本格化して、整列している子供たちがさみー、つめてー、と騒ぎだした。降るなら最初から降ってよ！と保護者の集団が悲鳴をあげ、子供は教室に避難、やがて校舎からアナウンスで「本日中止とします」の放送が流れた。運動会史上最悪の天気だ。
お昼、娘にお弁当を届けたあと、同じクラスのお母さん達と立ち話した。この運動会が終わって落ち着いたら、このクラスで早々に緊急保護者会をひらくとのことだった。

９９→１００

秋の雨。臨時の手伝いで９９のバイト。来週にはいよいよ新しい看板がついて、古い名前は取り外されるそうだ。まだ付き合いは短いけれど、お店にとっては節目の時期なのだろうから、面白い時期に入れたなと思う。いろんなものを新しくしていく作業を手伝うのは楽しい。商品の仕切り版を新品にしたり、溜まりに溜まった埃の掃除などをする。食品棚の裏は埃で真っ黒だ。先輩達が七年間のこの店の思い出話をしている。ここの板を割ったのはオレだとか、誰誰があそこの備品を壊したとか。
先輩達のいらっしゃいませの節回しは独特の渋さがあり、年季が入っていて、聞いていて飽きない。雨で濡れた床にモップをかけていると、新人の自分もここの風景の一部と化しているのを感じる。

秋晴れ

便箋１２枚分の呪いの文章ができあがり、原稿は無事に採用された。とにかくこの場所から一刻も早く立ち去ろう、と敷いたゴザをくるくる巻いて、その真黒い場所から出た。憎しみと恨みはなにか違いがあるようだ。憎しみは、その人と共に移動するけれど、恨みはその人がいなくなっても残るような気がする。あとは、温度も少し違うような気がする。
昔と違ってありがたいことは、今の自分には家族がいることだ。もう暗示にかかって苦しむのは本当に厭だ。外は良いお天気であったらしい。