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人間になればよかった...
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日記書いたあと深夜、家の防犯セキュリティのベル音がけたたましく鳴り響く。布団から飛び起きて、カーテンを少しあけてみるが、真暗い闇しか見えない。廊下に向かうと、家中の大人が集まりだしていた。といっても、おぬまお母さんと妹さんの女三人だけ。ベルを手動で止めると、しんと静かになる。
数年前、泥棒に入られた事をきっかけにこの家には防犯装置がついている。侵入者が赤外線を越えるとベルが鳴るといった仕掛けだ。廊下でそれぞれしゃがんで原因を推測しあうが、判る筈もない。妹さんは外に出て見回ってみようかという。私もそうだ、とパジャマ姿で思うが、もし誰か人がいて鉢合わせしたら余計危ないとお母さんが言う。結局、部屋中の電気をつけて、居間になんとなく集まり、お茶を淹れだした。
深夜のテレビをつけると、選挙の開票結果をまだやっている。こんな時間までやるんだなあと思う。キャスターの目もこころなしか腫れぼったい。ぽつりぽつりと、泥棒ではなく犬猫が通っても鳴るだとか、万一部屋で出くわした時の心構えなど、座談会になる。前回侵入した泥棒は、中国の大窃盗団グループだったらしく、現金を幾らかと私の婚約指輪を盗んで去って行ったが、一年後に警察に掴まった。指輪は中国本土に渡ったらしい。窓外は暗いまま何の音もない。時々ガラスにおでこをつけて、本当に異常がないかを何度も確かめる。
子供の様子を見に行く。子供達は布団の上でそれぞれの姿勢をとって眠っている。あれだけの大音響で全く目を覚ました形跡がない。話は次第に子供達の寝ぐせなどに脱線していき、笑い話などでる。
とにかく日ごろから用心に用心を重ねて暮らすことだ、という結論が出て、温かいお茶を湯のみにつぎ足す。 ……
朝はお天気悪し。雨まで降っている。こういう日はあまり見ないテレビをつけるが、選挙のニュースばかりだ。子供達に昨日のベルの音覚えてる?と聞いたら、なにが?と不思議そうに見る。全く呑気な人達だ。ここはやはり大人達が結託して守らなくてはならない。セキュリティをさらに万全にする対策をとることにした。
夕方、磯から捕ってきたヒトデやヤドカリが、みな死んでいた。海水のもとや餌を一式揃えて、長く飼うつもりでいた妹さんは残念そうにしている。異臭がひどかったので、二人で庭の隅に埋葬することにした。人は共に修羅場をくぐる事で仲良くなるらしい。私がスコップで土を堀り、妹さんが中身を埋める。昨夜のベルのせいか、作業の息が妙にぴたりと合うのがおかしい。
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総勢9人で、H市にある海水浴場へ行く。天気予報は夕方から雨マークだったが、海の上はちょうど良い薄曇りで、子供達の日焼けを心配しなくて済んだ。感じのいい海岸だと行く度に思うが、他のお客さんは少なく、だだっ広い海の表面に、カラフルな水着が点々と色を散らしていた。
おずおずと足先から膝、腰までつかると、歯が鳴る程水が冷たい。波に慣れるにしたがって、子供達は大胆に海に入っていく。後ろからついていって一緒に水につかると、海の波をまともにくらって、皆一緒に笑いだしてしまった。
ぷかぷかと浮き輪はたよりなく波に揺れる。ああ、大きなものには到底かなわないと思う。波のままに私は流されていく。ぷかぷか、ぷかぷかと。
海の上でゆれながら考える。人間もこの自然で出来ている。「我に艱難辛苦(かんなんしんく)を与え賜え」だとか、「苦労は金を出しても買え」の諺を、結構信じてきたけれど、生命を損なうものに、感謝してはいけないのではないだろうか。
生命は自然に逆らって、艱難辛苦を憎んだことから始まったのではないだろうか。
はっと見ると、子供の浮き輪もぷかぷかと遠ざかっている。浮き輪には紐がついている。ぐいっと思い切りひっぱると、子供達は戻ってきた。
鵜飼いの鵜のように、子供達はがあがあといっせいに文句を言った。
午前中いっぱい海遊びをしてからは、立派な磯料理屋に行き、大きな味噌汁や海鮮丼などを食べた後、水族館に行ってイルカショーなど見る。
家に帰ると、選挙の結果が出ていた。民主党圧勝の報道。三本指では時節の話題は極力避けようと決めていた。でも安易な引用でなければ、これからは事実のままに、少しずつ日記に含めていいのかも知れない。
子供達は私の存在に慣れてきた。そして、言うこときかなくても、怒ったり叩いたりしてこない人だと気がついた。訪れたのは、途方もない無秩序のカオスである。怪人に化けたってもう誰も怖がらず、逆に尻とかをめった打ちにされていたかった。だから今日は、ちょっと疲れた。
日中はコンビニに食料を買いに行ったり、娘の習い事の送り迎えをして過ごす。自分自身でいられる時間は、運転の時だけだ。単純に、一人になる時間に飢えている。大声で歌をうたって、気分転換する。
貧しさに 負けた
いいえ 世間に 負けた
自分は一人になって、色々考える事がすきなのだが、それが出来ないと、途端に窒息してしまうのだ。
夕方、子供達はどういう心境の変化か、競って手伝いをしてくれた。お皿はこび。おかずの配置。テーブル拭き。みんないい子達だ。夜、子供達に怪談をしてやると、ブルブル、とか、キャー、とか、画に書いたような怖がり方をして、面白い。
子供たちは布団の上でそれぞれの姿勢をとって眠っている。明日は海水浴に行く。今日一日の出来事を今思い返してみると、子供達はわたしがどんなヤツかを試していたのではないかと思う。
たいへんに暑い。移動する車窓には、田んぼの緑が延々と広がっている。BGMはディズニーの曲で、後ろの座席は子供達の騒ぐ声だ。興奮しすぎて取っ組み合いの喧嘩をしている子供達を引き連れて、近所の超大型ショッピングモールへ買い物に行った。
オープンして一年も経たない建物内は清潔で、巨大な通路の両サイドには眺め切れない量の店舗が並んでいる。夏休みシーズンの割には客はがらがらだった。ファミリー向けの季節物コーナーで、浮き輪、ビーチサンダル、虫とり網などを次々と選ぶ。小さな選択でも気に入ったものが見つかると嬉しい。子供達はどこにでも駆けていく。
下の食堂で騒がしいランチを食べてから、子供達のお目当てであるゲームコーナーへ。お金ちょうだい、と手を出してくる我が娘の、私を見る目つきが脅迫めいている。
お金がないと、どうやって遊んだらいいか判らない子になってしまうと、ゲームが終わるのを待ちながら、ぼんやり考える。つい最近まで大行列だったラブ&ベリーの機械の前はひとりもいない。だいたい、子供にかこつけて大人が相当数ここで遊んでいるのはどういう訳だ。事情は別に聞かないけれど。
一人の男の子が、つり銭の場所にひとつひとつ指を入れて、残ったコインがないか確かめながら歩いてきた。ベンチに座っていた私の前の一台だけを避けて、また黙々と別のゲーム機のつり銭捜しをしながら行ってしまった。遊びたくて気が狂いそうな顔だった。私の横で、ゲーム画面のラブが、私をおしゃれにしてねと繰り返し喋っていた。
夜、買ってきた浮き輪にしこしこ空気を入れてやると、子供達は大喜びだった。日記をつける体力を回復させる為に、目を閉じてヨガの呼吸をしていると、娘達から謎の紙切れが強引に渡される。『なんで遊びにこないのよ!!はやくきて、すてきなショーがはじまりますよ。場所はココ(手書きの地図付き)』無理やり連れていかれて、へんな芝居とテニスボールのショー(?)を見せされた。さあどうぞ、と振る舞われたコップの中身は水だった。
子供たちは布団の上でそれぞれの姿勢をとって眠っている。……また明日も起きてくるんだろう。ヨガの呼吸でエネルギーを補給しながら、いつの間にか居眠りする。
軍曹殿、我々の部隊は早くも壊滅寸前であります。そうか無念だ。……。なにこれ。あたらしいプレイ?
茨城生活は予想通り耳がきんきんするほど騒がしい。子供たちは四六時中廊下を走っている。私が草刈り機で草を刈っていると、きゃあきゃあ笑いながら後ろをついてくる。実に邪魔くさい。ばあ、と振り向くと、怪人と出くわしたごとく大喜びしている。なんて単純な人達だろうか。だあっと走って行ったら、みんな蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げた。
子供達をまいて家に戻ると、一方の大人達は、夏休みの綿密な計画を立てるのに忙しい。冷茶など飲みながら、水着や浮き輪の数について思案している。座布団をすすめられ、冷茶を口にすると、大人の責任がひんやりと喉の奥に広がった。
もう若くはない歳だ、とわが身を思いお茶の色を見つめる。ついこないだまで、廊下を走る方に属していたのだったが。
ためらっている暇はない。とにかく目の前の事をやること。
今夜の食事は安くておいしい夜ご飯を作ることが出来た。子供たちは布団の上で、それぞれの姿勢をとって眠っている。
明日は大人数でデパートに行って、海水浴に使う為の買い物をすることになる。日記をつける体力を残しておけるだろうか。
水曜はバレエの練習日。いつもなら踊っている内にストレスもたちまちに霧散する筈なのだが、腰に力をいれると、顔をしかめる程痛い。よかれと思って続けた関節のストレッチも、無理をかけすぎれば単なる拷問である。少しずつやりましょう、と先生から釘をさされていたのに、功を急いで壊してしまった。先生のレッスン中に怪我をした事は一度もなく、自己流の練習が問題だったのは明らかだ。
自分の身体の限界を知らないから、いつの間にか怪我をしている。身体を知る事は、たいへんに難しい。身体がいうことを聞くのは、自分が動かしているせいではなく、考える前に動いているからだ。この身体もよくよく考えてみれば、正体の掴めない、意地の悪いものだ。精神のあやつりが不可能な点と、全く変わるところがない。コントロールするためには、自分の限界をたえず知らされる必要があるのだろう。
今週のレッスンが終わると、しばらく教室に来られない。夏休みは茨城と東京と北海道を、行ったり来たりする予定になっている。練習が好きだから残念でたまらないが、腰を治すいい機会だと割り切って、先生に休む旨を告げた。
帰り道、さびしくてたまらず、商店街の音楽を聞きながら涙する。
夕方、家族三人でカルピスを飲んで別れの会。おぬまさんは仕事の為、東京に残る。しばらく家族で揃うことは出来ない。今夜はトークショーをやるらしく、玄関先で声援を送って見送った。うまく喋ったのだろうか。
夜、荷物の入ったバックを背負って、どこでもドアで茨城へ。小沼おかあさんと、小沼妹さんとその子供たち3人が、わあわあと賑やかに出迎えてくれた。娘を足してちいさい頭が四つ、とにかくよく喋る。明日から戦場のように忙しい日々が始まりそうだ。
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