果樹

土曜日、茨城。今日は義母と娘と３人で、花木センターへ行って果樹を三本買った。いちぢくと、紅スモモと、姫りんごの小さな苗木だった。軽自動車の後に積んで、大切に持ち帰った。そして、夕方まで鉢ごと水で冷やしておいて、日が陰ってきた頃、穴を掘って植えた。今出来ることを何も考えずにしようと思った。夜、寄せ鍋を作って、食べながらテレビのバラエティ番組を観た。今日植えた果樹に実がつくまで、５年はかかるだろうと義母と話した。

表札

隣の空き部屋に新しい方が越してきた。とても穏やかな年配の方だった。東京では、優しいご挨拶を頂くのがどれだけ安心か、たとえようもない。互いを知らなければ僅かな物音でも神経を尖らせ、余計な推測で暮らし合わなくてはならない。お隣さんは入居の際、すぐに大きな傘立てを入口に置かれたので、私は中に入っていた数本の傘の柄で、人柄や家族構成をなんとなく推理する気持になっていた。結局お話ししてみると、傘のイメージはまるで一つも当たっていなかった。私たちの部屋の入口前に、表札はかけていないのだけど、相手にはどう映っていたのか。無愛想はいいことじゃないな、と思ったのだった。

電気スタンド

夜、娘が偏頭痛を訴えたので、隣に付き添って雑談をした。娘の脚は、布団からはみだす程長くなっていて、パジャマの胸はふっくらとして見える。優しい女性に育ってくれればいいと願っていた。きみは、と変人で母親らしくない私の声が、喉から漏れるのを聞く。きみは、大きくなったんだね。
決して美人ではない、だけど愛してやまない私の娘が、もう眠っている。

難問

民主党が今日から政権与党になった。古いものが押し流されるように新しくなるのだろう。私は変人なのか、友愛という言葉だけ、小さい棘のように聞く度に気になる。友愛、それは外交を指すか、同国民の互いの愛を指すか判らないけれど、私には国民向けの言葉ではなく、政治を志す同胞への矢印のように映るのだった。
娘のクラスを改善する方法があるのか、ネットなどで学級崩壊に関する記事を読む限りは、決定打はなさそうだ。保護者の方と連携を計る手段も簡単に考えていたが、今日他のお母さん達と話したら、個々の家庭で温度差があるようだ。落ち着いているお母さんのお子さんは塾に通っている。学力の確保が出来ていれば、激しく対応を学校に迫ったりはしないのかも知れない。学力に関しては、娘は、溜まる一方の授業の遅れは自宅学習で解決しないといけないだろう。

外へ

書くのに難儀している。まだしつこく一日の記録を探そうとする自分は、この場所に執着している。私の生活の円は小さいので、２年間でだいたい巡る場所は巡ったのだろうと思う。野球の素振りのように毎日やることで、続けてきたのも無駄という訳ではなく、よかった事も沢山ある。今は、まだ本当に、字が好きで、もう少し続けてみたい。もしそれで、字が必要ない暮らしになったら、この日記は私にとっての社会への鍵だったということになる。

割り箸

９９のパートは順調に続いている。たまに緊張で心臓がおかしな動悸を打ちはじめるし、小銭に関しては５００円、１００円、１０円、５０円、５円、１円の形状が一瞬では判別出来ない。だけど、私にとっては画期的に上手く行っている。はあ？なにそれ、と人から思われる事であっても、本来なら恥ずかしくて、悔しい思いをするのが当然の頭の欠陥も、努力である程度はカバー出来ると信じている。判らないくせに速い動作をしようとすると、たいてい間違える。だから家に帰ってから、自主練習で小銭の形を眺めている。
いろんな人が、人には言えない苦労をしてこの世界を生きている。今日お釣りをお客さんに渡して、割り箸で笑顔を作る練習が相手を喜ばせた、と感じて嬉しかった。私の苦労は多分、そうでもない方だ。