穴二つ

低予算ホラーで人を呪う文章の小道具が必要になったとのこと、２日かけてネガティブな言葉を収集して組み立てていると、どんどん自分自身にも跳ね返って来て、早く仕上げないと気持が危ないと思う。暗い場所でじっとしてアイデアを出す手もあるけれど、自虐の言葉よりは、他罰感情の方がいるので、ネットで罵倒系の場所に行って挑発的な言葉を拾ってくる。これも訓練になるかも知れないが、苦痛でたまらず、早く済ませてしまいたい。細かい字でぎっしりと便箋１０枚分人を呪い続ける必要があるがまだ６枚にしかならない。もうトホホを通りこして、頭が痛くなってくる。私は暗示にかかりやすい人間であるのかも知れない。
相棒と撮影隊の方達は、昨日神社でお祓いを済ませてきたが、私はまだ行っていないから近日に行くつもりだ。撮影場所も実際の廃工場などを利用するらしい、やはり無事に終わって欲しい。

噂

娘のクラスは他のクラスでも悪評をまいているようだ。今日は忙しい日で、お母さん友達から色々な話を聞いた。頭の中が疲れすぎている日みたいだ。明日頑張ろう。

速さ

朝９９のバイト先に向かう途中、ごとん、と異様な音がして、前を見たら車のバンパーが落っこちていた。タクシーの後部に接触して、事故を起こした車の運転手が、絶望したように額を押さえているのが目に入った。忙しい毎日の決まり切った手順、あの人も気が急いていたのだろうか。
今日の収穫。レジのバーコード通しが楽になった。ふっと感触が掴めて、倍の速さで出来るようになった。上手に出来ると音楽にも似ている。仕事は片時も休む間がない。お客様はとにかく速さを求める。お財布の小銭を床に落とした人が３人、バーコードを通さずに見せただけで買っていこうとした人が２人。

金木犀

今年最初の金木犀が、茨城の家の周囲で香っていた。天女が舞い降りた、と例えたらいいだろうか、異界の女性の匂いがする。知り合いの一人は頭痛を呼ぶ悪臭に感じられるそうだ。どんな風なの、と聞いたら、道路近くの庭に植えないでと腹が立つ、暴力的な香り、と説明してくれた。万人に好かれるものはないらしい。でも私はこの香りがとても好きだ。
小花が沢山ついているのを、娘と手で触って、鼻を近づけたのだけど、傍でいるより、離れた方がより香りを強く感じた。

脚本の枷

説得力を発揮したあと、すぐにそれを打ち消す事を書く
悩んでいる場面を絶対に書かない
安易に悩ませない
よく書けた！と思ったところは、遠慮なく棄てること
感動しそうになったら、その場を立ち去ること
どこまでも我慢すること

少女

Ｂ先生のバレエ教室に、小学５年生の女の子が来ていて、その子は普段は新体操をしているそうで、レッスンが終った後に五分間の演技を見せてくれた。教室にあったメトロノームを使って、リズムだけで踊ったのだが、見ていて感動的だった。年齢に似つかわしくない筋肉は、この子が気の遠くなる程練習を続けていたことを示していた。競技と自分があるだけ、という厳しさが感じられた。 練習という言葉の意味が定義し直されて、自分は、新しい活路を見出したような気がしたのだった。